ハクライトのおすすめ漫画ブログ

大事な事は全部漫画から教わった!! 漫画大好きハクライトが、笑える、泣ける、懐かしい、面白い、楽しい、ためになる、おすすめ漫画を新旧問わず紹介していくよ!

不思議事件、お待ちしてます『浪漫倶楽部』

不思議な体験された事、みなさんはありますか?
どうも、不思議体験はあまり無いけど不思議な事大好きハクライト(@hakuraito00)です。
自分で体験していなくても、不思議の世界に連れて行ってくれるから、漫画って素晴らしいですよね。

そんな訳で、今回紹介しますのはこちら。

作:天野こずえ先生
浪漫倶楽部

浪漫倶楽部』簡単3行あらすじ

 夢ヶ丘中学校に通う二年生の火鳥は、不思議な現象が起こった際にそれを解決する浪漫倶楽部に所属していた。

そんなある日火鳥は裏山で、彼にしか姿の見えない幼い少女と出会い、彼女がこの地域の不思議な事件の発生を抑えていた、石の精霊だと知る。

ころころと丸いからと言う理由で、コロンと名付けられた少女は、浪漫倶楽部の一員となり、火鳥達と一緒に、数々の不思議事件に挑む事になる。

掲載誌情報!

浪漫倶楽部』は「月刊少年ガンガン」にて、1995年6月号から1998年No3の号まで連載。
コミックスは全6巻。
2005年に「マックガーデン」より新装版が発売されました。

天野こずえ先生はここから始まった。

本作は、『AQUA』『ARIA』『あまんちゅ』などの名作で知られる天野こずえ先生の、デビュー作です。 

水の美しさがとても素晴らしく描写され、アニメ化もされたこちらの三作は知っている方も多いと思います。

こちらの作品で天野先生のファンになった方も多いと思いますが、デビュー作は名作ながら、ドラマCDにはなったものの、大きくメディア展開される事はありませんでした。

ですが、この3作を知っていて、デビュー作の『浪漫倶楽部』を知らないのは非常に勿体無い!

放課後に皆で集まり、不思議な事件を解決する部活と言う、夢溢れる天野こずえ先生の原点に是非とも触れてみて下さい。

物言わぬ物達の声を想いに耳を傾ける

不思議事件が起きる原因の多くは、普段は物を言う事が出来ぬ人間以外の者達の願いが具現化し、不思議な事件へと発展していきます。


助けて貰った人に恩返しをする為に人間になった蛍。
人見知りのご主人を助けようと願った、彼女に描かれたペンギンの落書き。
マフラーを首に掛けてくれた人間に恋をし、想いを伝えようとした雪だるま。
想いを込めて作った人形劇のパペットが、ご主人の言えなかった想いを伝えに来る。

彼らの存在は、時に優しく、温かく、けれども時に切ない存在でもあります。

昔から日本は、八百万の神付喪神などと呼び、全ての物に神が宿っている、長く愛用してきた物には魂が宿る、などの信仰が根付いています。

大切にしてきた物や思い出は、感謝や素敵な物語となって人生に明かりを灯す。日常を生きる上で、その感覚はとても素晴らしい生きる糧となってくれます。

幼い頃、大事にしていた人形やぬいぐるみはありますか?

長年愛用している、使い込まれた品はありますか?

伝えられないまま終わってしまった、秘めた思いはありますか?

それはいつか、不思議で素敵な物語となって、貴方の前に現れるかもしれません。本作はそんな暖かな希望を持たせてくれる作品です。

明日誰かに話したくなる豆知識が増えていく

先日話題となりました、真竹が一斉に花を咲かせたと言うニュース、耳にした方もいらっしゃると思います。
このニュースが話題になった理由は『真竹は120年に一度しか花を咲かせず、咲かせた後は竹林ごと全て枯れてしまう』と言う、非常に物珍しい事象だったからだと思ってます。

このニュースを聞き、私はこう思いました。

 

「あ、これ、浪漫倶楽部でやってたやつだ!」

 

何だか某進○ゼミを思い出しそうですが、竹林を管理している偏屈なおじいさんの話の中で、この真竹のエピソードが出てくるのを強く覚えていました。

他にも、

ハロウィンで必ず登場する『ジャック・オ・ランタン』とは何者なのか?

何故昔は、雛人形を川で流していたのか?

どうして風見鶏は、雄鶏でなければいけないのか?

全てに答えられる方はいますか? もしそうでなければ、本作を一読する事をオススメします。

 

今でこそちょっと調べればすぐに分かる問題ですが、当時はインターネットもそれ程普及していなかった時代でした。本作で得た知識を誰かに話したり、また自分で創作をする時のきっかけにしたり、非常にお世話になったものです。
物語と共に、関心しながら得た知識は一生物になります。
クリエイティブな活動をされている方、話のネタが沢山転がってますよ。

ハクライトのおすすめエピソード

最後に私のおすすめのエピソードを一つ紹介させて頂きたく思います。

コミックス一巻、第四話『消えゆく想い』

ある日部長は、蜘蛛の巣に掛かった一匹の蛍を助けます。その後、痴漢の疑いをかけられてしまった部長は、モテない故の行動だと馬鹿にされ、勢いあまり「自分にだって彼女くらいいる!」と大嘘をついてしまう。
困り果てた部長の前に、突如現れた女の子「源氏雛子」
部長の為になるならと彼女役を引き受ける、彼女の意図は?

コミックスの最初、そしてメインキャラクターとして登場する部長を強烈に印象づける、切なくて胸が暖かくなる名作です。

もしも未読の方がいれば、試しに一巻、第四話まで読んでみて下さい。

本作『浪漫倶楽部』のテーマは、「終わらない放課後」です。

きっと貴方も、火鳥達と一緒に不思議事件を体験する内に、この放課後が終わらないで欲しいと、願うことでしょう。

 

と言う訳で、今回紹介しましたのは、

作:天野こずえ先生
浪漫倶楽部でした。

では、今回はこの辺で!

ハクライト(@hakuraito00)でした!

これから皇帝ペンギンを飼いたい人へ『エンペラーといっしょ』

貴方はどのペンギンが好きですか?

どうも、ペンギンはどれも大好きハクライト(@hakuraito00)です。

ではペンギンの中でも、特に皇帝ペンギン好きに是非読んで欲しいのがこちら!

作:mato先生
『エンペラーといっしょ』

『エンペラーといっしょ』簡単3行あらすじ

暑い夏、主人公の女子高生香帆は、お茶を飲もうと冷蔵庫を開けると、その中には何故か、一匹の皇帝ペンギンが、すっぽりと詰まっていたのだった。

驚く家族だったが、水族館に行く事を拒否した彼は、意外にもすんなり受け入れられた香帆の家で暮らす事になる。

名付けの際、自ら『エンペラー』と書かれた札を選んだ皇帝ペンギン、エンペラーとのほんわか同居生活が始まる。

掲載誌情報!

本作『エンペラーといっしょ』は、集英社のWEB漫画サイト『少年ジャンプ+』にて、2015年10月28日より2017年7月12日まで連載。

コミックスは、全4巻が発売中です。

皇帝ペンギンとは何者か!

コウテイペンギンとは鳥網ペンギン目ペンギン科オウサマペンギン属に分類される鳥類。
別名:エンペラーペンギン。

全長は115cm~130cm。体長は100cm~130cm、体重は20kg~40kgにまで達すると言う、現生のペンギン目内では最大種である。

南極大陸の周辺に分布し、非繁殖期は海上で群れを為して生活をする。

頭部とフリッパーの外側の色は黒。上胸は黄色。腹部やフリッパーの内側は白。側頭部の耳の周辺は橙色である。

水深の浅い大陸棚に好んで生息しているが、最大では水深564メートルまで潜水した事が記録されている。

他のペンギン同様い肉食性で、魚類、イカ、オキアミなどをメインに捕食する。
主な天敵は、シャチやヒョウアザラシである。

零下数十度の冬の氷原で繁殖を始める為、コウテイペンギンは『世界で最も過酷な子育てをする鳥』と呼ばれる事もある。

もしもこれからコウテイペンギンを飼おうとしている方は、是非これらを参考にしてもらいたい!

もてもてと歩く姿がたまらない!

皆さんはペンギン、特に皇帝ペンギンに対してどんなイメージを持っていますか?
動物園とかで見つけた時や、テレビなどで見る時は、ゆっくり歩いたり、ザブンと水の中に飛び込んで、素早く泳いだりする姿が印象的だと思います。

本作に出てくるエンペラーは、色々な所を『もてもて』と歩いていきます。

ここがmato先生の秀逸な所、それはエンペラーの歩き方の表現を

 

もてもて

 

と言うオノマトペで表現した事だと思います。

とにかく家の中にいる皇帝ペンギンが、自分の後ろをもてもてと着いてくる。

カワイイ!

餌をあげようとすると、意外にも歯が鋭い!

カワイイ!! 

床が綺麗になっていると思ったら、突然腹ばいになったエンペラーが、ずりずりと移動している。

トニカクカワイイ!!!

ペンギン好きの方は勿論の事、そんなにペンギンに興味の無かった方も、本作を一読して貰いますと、皇帝ペンギンの素晴らしさが分かって貰えると思います!

レッツペンギンライフ!!

ペンギンの事、どの位知っていますか?

動物園などで可愛らしく愛嬌を振りまくペンギン達。

ですが皆さんは、そんなペンギン達の事をどの位知っていますか?

例えば、ペンギンの足は短く、もてもてとした歩き方が非常に可愛らしいですが、実はペンギンは足を常時、まるで体育座りのような状態に折りたたんでおり、その為あのような歩行になっていると言う事、知っていましたか?

例えば、マイナス60度にもなる程の激しいブリザードの中、ペンギン達は『ハドル』と言う集団を作る事で、次々に移動して外側の位置を交代し合い、寒さを凌いでいると知っていましたか?

読めば読むほど、知れば知るほど面白い皇帝ペンギンの世界。
普段知らなかった皇帝ペンギンの魅力が、ギュッと詰まった作品です。

フィクションだからこそ見られるエンペラーの愛くるしさ

今作のエンペラーは、普通は南極にいるペンギンとは違う部分も当然沢山ある為、フィクションならではの、リアルとはまた違った愛くるしいペンギンの姿も見ることが出来ます。

皇帝ペンギンに、幼稚園の帽子がこんなに似合うとは!

皇帝ペンギンを自転車のかごに乗せて走る、なんて楽しそうなんだ!

一度でいい、そのフカフカでモフモフの毛皮をぎゅ―っとしてみたい!

そんな、ペンギン好きなら誰もが憧れるような情景がたっぷり詰まった、ペンギン愛に溢れた本作、まだ触れた事が無い方は、是非読んでみて下さい。

 

と言う訳で今回紹介しましたのは、

作:mato先生

『エンペラーといっしょ』でした。

何者かになりたかった全ての人へ『月曜日の友達』

貴方は、どんな青春時代を過ごして来ましたか?

どうも、青春時代は遊び倒したハクライト(@hakuraito00)です。

では、今回紹介します作品はこちら。

作:阿部共実(あべともみ)先生
『月曜日の友達』

 

『月曜日の友達』簡単3行あらすじ

中学生になったばかりの水谷茜(みずたにあかね)、途端に大人っぽい振る舞いを取るせいか、周囲から浮いていた。

ある日、茜は一人の少年、顔は綺麗だが、様々な奇妙な噂の付き纏う変人、月野透(つきのとおる)が、不良グループに囲まれているのを見かねて制止に入るが、それを友人の土森に止められる。

「もう中学生なんだよ」と掛けられる言葉に、疑問と違和感を覚えて家を飛び出した水谷は、月曜日の夜の学校で、超能力の練習をする月野と邂逅する。

掲載誌情報!

本作は、小学館『ビッグコミックスピリッツ』にて、2017年25号から2018年2・3合併号まで連載。

全二巻、8話と言う短編です。

 

何者かになりたかった青春時代を過ごした全ての人へ 

学生時代。
青春時代。

将来に備えて、勉強を頑張った人。

必死に部活に打ち込んだ人。

大好きな恋人と、大恋愛をした人。

仲間達との馬鹿騒ぎを楽しんだ人。

特に何もしなかった人。

もしかしたら、青春時代を思い出したくないと言う人もいるかもしれません。

だけどもし、その時代の事を思い出した時、少しでも眩しく輝かしいと感じた人がいましたら、今回の作品を読んで貰えたら、きっと何かが、刺さるか響くか、すると思います。

振り返った今、あの頃は楽しかったと、胸を張って言えていますか?

 

貴方の将来の夢は何でしたか?

子供の頃は「君達は何にでもなれる」と先生や大人達に太鼓判を押された子供時代も、成長していくにつれ、将来の夢は? 就きたい仕事は? 進路希望先は? 等と聞かれるようになります。 
大きく広がっていたはずの未来が、現実と言うしがらみに縛られ、いつしか選択肢が狭まっていく。だけど、自分はもっと何かが出来るはずだ、何者かになれるはずだ、と信じてはいても、それを口に出せる勇気が無い人も居たでしょう。

だけど、全ての人は自分でも気付いていない可能性を持っているはずだし、自分はまだ何者かになっていないだけで、もっと凄いことを出来るはずだ、あの時、そう思っていたじゃないか、そんな昔の輝かしい情熱や、瑞々しい思い出を、振り返らせてくれる。

 

貴方の、今の将来の夢は、何ですか?

 

情景はモノローグで語られる『純漫画』と言う手法

 

今作の作品の特徴の一つは、普通の漫画で使われるような『擬音』の手法が無く、情景を音の情報などは、登場キャラクターの台詞で語られる部分です。

例えば、ジョジョシリーズのキャラクターが登場した時の、『ゴゴゴゴゴゴ』

ドラゴンボールで、悟空のカメハメ波が当たったときの『ドゴーーーーーン!』

こう言った漫画的な表現が無く、私はこの作品を始めて読んだ時「詩的で素晴らしいし、なんて純文学的なんだ」と思いました。

純文学とは、物凄く簡潔に言うと、心の内面や人の機微など、より芸術的な分野の文学の事を言います(詳しく知りたい人はググッて下さい)

 

「月曜日。朝。灰色の校舎、黒い頭の群れ、紺の制服。生徒の喧騒と、土のにおいに混じるライラック。春。今日もまた学校が始まる」

 

「暗闇でも光ることを忘れない宝石のような月野の瞳。その小さく薄い口から高い音でとび出すのは、幼稚で変てこですっとんきょうなおとぎ話のようだ」

 

「蝉と蝉と蝉の叫びが入り乱れ激しくぶつかり合う。激しく光を照らされた葉が重なり合ったセロハンのように真緑に透ける。深海のように染まる木々の影。地に跳ね返る木漏れ日は肌を白く焼く」

 

本編内で語られる情景描写は、どれも美しく、その美しさは正に、青春時代のきらめきを大人になってから表現するとしたら確かにこうかもしれないと思わせる、懐かしく、胸にしみる言葉達になっています。

言葉で説明出来る部分をあえて絵だけで説明する試みが、漫画表現への挑戦ならば、漫画での表現なのに漫画的表現を多用せず、敢えて読者の想像力を掻き立てるように、文章を多用したのもまた、新たな漫画表現の挑戦の一つだと思います。

私の造語だと思いますが、この月曜日の友達と言う作品は、『純文学』ならぬ『純漫画』と名付けるのに、相応しい作品だと思いました。

普段小説ばかりで、あまり漫画は読まないと言う方は珍しいかもしれませんが、是非そんな方が居ましたら、手にとって欲しい作品です。

 

あの時気付けなかった眩さを思い知らせてくれる 

主人公の水谷は、中学生になった当初はまだ小学生気分のまま、自分を取り残し周囲が大人になっていく様をもんもんとしています。
そんな時に出会ったのが、超能力と言う子供じみた願望を現実にしようとする月野。
水谷はそんな月野を同士だと思い、月曜日の夜だけの友達になります。

しかし、月野を取り巻く環境や、彼が超能力を手に入れたかった理由に触れるにつれ、自分がどれだけ無自覚に人を傷つけてきたか、大人になるとは何なのかを、悔悟の念と共に考えるようになります。

それは彼女が本当は、自分を追いていってしまった周囲の友達と同じ様に、大人になっていく行為でした。

貴方は、自分が大人になった瞬間を、覚えていますか?

思い返すと悩んでばかり、苦しんでばかり、だけど、月野の事を思い成長をする子供っぽい水谷、徐々に、でも確かに、大人への階段を上っているのです。

覚悟も信念も、後から付いてくるもの。

そして、その様子を本作は、子供が大人になる事の美しさと切なさを、非常に優しく表現してくれている作品だと思います。

 

自分が大人になった時の事を覚えていない方。

あの時、大人になる自分に無頓着だった方。

その眩さをもう一度確かめ、貴方も確かにこの素晴らしい階段を上って、今があるのだと思い出す為に、本書をめくってもらえたら嬉しいです。

 

音楽で聞く『月曜日の友達』の世界

最後に紹介したい動画があります。

ロックバンド『amazarashi』の楽曲『月曜日』です。

こちらは『amazarashi』のファンだった阿部先生が、本作の完結記念に楽曲のタイアップを依頼した所、『amazarashi』で楽曲を手がけるギターボーカルの秋田ひろむさんが、元々阿部先生の作品のファンであり、月曜日の友達を読んだ折に、「すごくいい話なので、過去の曲ではもったいない。新たに楽曲を書きます」と提案。

デモ音源を聞いた阿部先生が、楽曲からインスパイアを受けて、書き下ろしの新エピソードを執筆。それをPVの中に取り入れた、コラボレーション楽曲となっています。

音楽で更に広がる『月曜日の友達』の世界をお楽しみ下さい。


amazarashi『月曜日』“Monday” Music Video|マンガ「月曜日の友達」主題歌

 

 

と言う訳で、今回紹介しましたのは、

作:阿部共実先生の

『月曜日の友達』

でした。

と言う訳で、今回はこの辺で!

ハクライトでした! 

自分の当たり前以外を否定する事の残酷さ『聲の形』

漫画を選ぶ時の基準は何ですか?
どうも、作品を選ぶ時は縁を重視します、ハクライト(@hakuraito00)です。

と言う訳で今回は、あるツイッターの呟きに興味を惹かれ、作品を読んで更に衝撃を受け、今となっては何度も読み返す、不思議な縁を感じる作品を語ります。

と言う訳で、今回紹介します作品はこちら。

作:大今良時(おおいまよしとき)先生
『聲の形』

『聲の形』簡単3行あらすじ

小学生の石田将也(いしだしょうや)クラスに転校して来た西宮硝子(にしみやしょうこ)は、聴覚に障害を持つ少女。

所謂『ガキ大将』だった将也は、耳に障害のある硝子をからかい、補聴器を何度も壊してしまうが、壊した硝子の補聴器の額が、170万円相当だと知り、自分が犯した過ちの大きさに愕然とする。

次のいじめの標的となった将也は、転校した硝子に謝罪しようと、高校生になった時、彼女を探し出し再会を果たす。

(注:本作のあらすじは、マガジン連載版の物となります)

 

掲載誌情報!

初出は2011年2月号の『別冊少年マガジン』で、本作が「第80回週刊少年マガジン新人漫画賞」で入選した時のまま、45Pで掲載されております。
その後、『週刊少年マガジン』2013年12号に、リメイクバージョンの61Pが掲載されました。(ハクライトが見たのは最初に見たのはこちらの作品です)

更にその後大反響の末に、『週刊少年マガジン』2013年36・37合併号より連載開始、2014年51号で完結。全7巻。62話となっております。

大ヒットの末、劇場用アニメのアニメにもなりましたこちらの作品、あらすじを聞いただけで「辛くて読めない」と言う声もよく聞きます。

だけど是非、傷を受けるのを覚悟の上で、ページを捲って欲しい作品です。

「もしも漫画は、1年に60Pだけしか読まない方、どうか今年はこの読み切りを読んで下さい」

私はどちらかと言えば、漫画との出会いは『縁』だと思っているところがあり、自分から情報収集もしますが、「今この漫画と出会ったのも縁だ!」「今、この人にこの漫画を薦められたのも何かの縁だ!」と考える事が多いです。

この作品と出会った縁は、今からもう6年も前(2019年現在)の、2013年になりますね。当時、『マガジン編集部の班長』だった方の、こんなツイートを目にしました。 

その人の漫画論は非常に興味深く、編集者がどのような視点で漫画と言う文化を見つめ、作り上げているのかを知ることが出来て、ツイートがある度に追いかけておりました。

1年間で60ページだけしか漫画を読まない人がどの位居るかは分かりませんが、私はそんな、漫画に関しては特段に信頼している人の謳い文句に、強烈に興味を惹かれました。

 

「マガジン編集部の班長が、今年漫画はこれしか読まなくてもいいと思わせられる程の作品って、一体どんなものなんだ?」

 

そうして出会った読み切りは、こうして6年と言う時間が流れた後でも、初めて読んだ時の強烈な衝撃と共に、私の心に残り続けております。

陳腐な表現ですが、正に頭をハンマーでぶん殴られたような衝撃を受けたのです。

その作品は、勿論連載になり、沢山の人の心に、衝撃と感動と、もしかしたら胸が痛い程の傷も与えたかもしれません。ですが、人生を生きる上で、読んでおくべき作品だと思います。

 

自分の世界の当たり前以外を否定する残酷さ。

 作品においての主眼は、いじめを後悔している人間と、過去にいじめられていた人間。
そしてその『いじめ』と言う行為の真ん中にあるのは『聴覚障害』です。

 

主人公の将也は、子供の頃は周囲の面白さだけが世界の中心になってしまっているような、言ってしまえばそれほど珍しいタイプでは無い、どこにでもいるような男の子です。

そんな彼のクラスに編入してきた硝子は、将也にとっては、自分が今まで出会った事の無い存在でした。

彼女が、耳が聞こえない生活を送っていると言う苦しさや大変さを知ろうともせず、珍しいものが来たと、面白半分にいじめを行います。

そして、彼女が居なくなった後に、いじめの標的が自分になった事で、彼はようやく彼女の痛みを理解する事になります。

どれだけ後悔しても、彼女を深く傷つけた事実も、自分へのいじめも止まりません。

物凄く胸に刺さり、私は辛い思いを感じながら読んでました。そしてその時に思っていたのは、

 

「将也の自業自得だ」

「硝子の痛みはこんなもんじゃ無かった」

 

そして、

「だから将也は、いじめられて当然だ」

 と言う結論に自分が至った事に気付いた瞬間、自分と言う人間の恐ろしさに震えました。

 

自分だったら、障害があるなんて理由で、硝子をいじめるような事はしない! 

そんな事は当たり前だ!

だから、将也が傷つこうがいじめられようが、当然の報いだ!

 

だけどこれでは、『自分には理解が出来ない、自分の世界に存在する「当たり前」から外れた存在を否定するように、硝子をいじめた将也と同じ』ではないか?

 

この『聲の形』と言う作品の素晴らしい部分は、誰しもが持ちえるかもしれない闇をあぶり出し、その闇を見つけた本人に、是か非かを問い掛けさせる力を持っている部分だと思います。

 

想像力を巡らせなければならない意味とは?

 とは言っても

「自分は絶対にいじめなんてしないし、やはり将也が間違っている」

と思う方も当然いる事でしょう。

 

いじめと言うものが社会問題になってから、もうどれだけの時間が経ったか分からない程、深刻な問題になってしまいました。

 私自身は、「いじめられる方も悪いんだ」理論には大反対です。

どんな理由があろうとも、いじめる方がいけないし、いじめられる方も悪いなんて事はあるはずない。賛否両論ある意見かと思いますが、私はそう思っています。

 

ただそれは、自分が間違った行為をしている自覚がある場合かもしれないと思ってます。

『聴覚障害』と言うのは、世間的には誰しもが理解が出来る、有名なものです。だから、対応策も想像が付きますし、社会的な保障なども比較的しっかりしているでしょう。

 

では、貴方の前にもし、貴方がまだ知らず、世間的にも殆ど認知されていない、病気や症状で苦しんでいる人がいた時に、貴方はどんな行動を取る事が出来ますか?

 

あの人の事について、自分は理解が出来ないから、助ける事は出来ない。

そもそも、嘘を言って同情を引こうとしているのかもしれない。

 

そう考えてしまう時、ありませんか?

 

人間です。全ての事に意識を向け、常に優しくいる事なんて出来る訳がありません。

だけど、私はこの作品を通じて、大今先生にこう語り掛けられている気がしてなりません。

 

『この作品は、社会のほんの一例を切り取ったものです。貴方の周りにも、病気や障害で苦しんでいる人がいるかもしれません。そんな人が一番辛いのは、助けて貰えない事よりも、理解を得られない事なのではないですか?』

 

じゃあ、その為に必要な物は何か?

 

私は想像力なのでは無いかと、思う次第です。

 

少しでも心に刺さった方、未読の方、読み直したい方、良ければ本作を読みながら、周囲に耳を傾け、想像してみて下さい。

もしかしたら新しい何かが、見つかるかもしれません。

 

 

と言う訳で、今回紹介しましたのは、

大今良時先生の

『聲の形』でした。

 最終巻7巻と比べると、二人の成長度合いが分かるかと思います。

 

それでは、今回はこの辺で!

漫画大好きハクライトでした!

報われない努力は無駄なのか?『3月のライオン』

本日は2019年の3月31日です。

明日はいよいよ新しい元号が発表されますね。

どうも、ワクワクしてます、ハクライト(@hakuraito00)です。

3月の最後には、是非、こちらの作品を紹介したかったのです。

それでは早速、今回紹介いたしますのは、こちらの作品。

作:羽海野チカ(うみのちか)先生
『3月のライオン』

『3月のライオン』簡単3行あらすじ

両親を交通事故で失い、行く宛の無くなった少年桐山零(きりやまれい)は、父の友人での幸田に引き取られ、プロの棋士を目指す将棋一家で生きる為に、将棋の世界へと足を踏み入れた。

圧倒的な努力の積み重ねの後、弱冠15歳の若さで、史上5人目のプロ棋士になるが、それは将棋一家の幸田家を崩壊へと導いたと感じ、六月町で一人暮らしを始める。

その後、橋向かいの三月町で祖父と暮らす三姉妹、川本あかり、ひなた、モモ出会い、人の温かさや優しさに触れていく、胸の奥底に明かりが灯る、熱き将棋の世界を舞台にした珠玉の人間ドラマ!

 

掲載誌情報!

白泉社『ヤングアニマル』にて2007年第14号から、現在も連載中です。

2019年3月現在、14巻まで発売中です。

このブログを立ち上げ、本当は一番最初に紹介したかった漫画でしたが、折角なので三月の最後の日が、この作品に相応しいと思い、この日まで我慢しました。

と言う訳で、普段よりちょっと長いかもしれませんが、お付き合いください。

 

アニメ化、実写映画化、スピンオフ。盛り上がりを続ける3月のライオンと、現実の将棋界

さて皆さん、将棋は好きですか?

 

私は大好きです!

基本的に昔は振り飛車党(飛車を動かす戦法)でしたが、最近はよく居尾車(飛車を動かさない戦法)も指しております。

本編の中でも、零君は居飛車党なので、もしかしたら感化された部分もあるかもしれません。元々将棋が大好きだった私は、3月のライオンの大ヒットにより、将棋界がもっと盛り上がってくれたら更にいいのになと、こっそり思ってました。

そんな時、将棋界に彗星の如く表れ、世の話題をかっさらっていった方が居ましたよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうですね、ひふみんですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はい、すいません、加藤一二三さんも大好きですが、どちらかと言えば将棋界を引退なさってから話題になった方ですので、今回は勿論、藤井聡太さんの事を言っています。

 

3月のライオンでは、史上5人目の中学生天才棋士として、桐山零君の事が書かれています。これがどれくらい凄いことなのか?

現実の将棋界においても中学生でプロ棋士になったのは、加藤一二三さん、谷川浩司さん、羽生善治さん、渡辺明さん、そして藤井聡太さんの5人のみ。

作品の盛り上がりと共に、藤井さんが登場した事に、運命を感じましたよ。

 

「リアル零君じゃないか!!」

 

と、今でも藤井さんを応援しているハクライトです。

将棋界の事はこの辺りにして、本作の事について語って行きましょう。

 

「3月はライオンのようにやってきて、子羊のように去る
(March comes in like a lion and goes out like a lamb)」

 

『3月のライオン』と言うタイトル、とても綺麗な言葉だと思いますが、これって元は、イギリスに伝わる、天気にまつわることわざだそうです。

3月は荒々しい気候から始まり、 穏やかに去っていく事から、このことわざが生まれたそうで、これを聞いた羽海野先生が「何か物語が生まれそう」と思い、このタイトルにしたそうです。

また、監修の先崎学さんによると、3月は順位戦(1年を通して行われる、棋士達のランキング制度)の末期。この時期は、全ての棋士が荒々しい獅子のようになるから、と言うコメントも残しているそうです。

 

本作は、将棋の世界で命がけで戦う棋士達と、盤面では無い普段の生活の上でも、精一杯生きる川本家との対比を、どちらにも行きかう桐山君の視点で描かれています。

その所為か、桐山君に共感する部分も多くありつつも、私はこの3月のライオンという作品を、「桐山君の視点」で読むことが非常に多いです(勿論、島田さん視点だったり川本家のおじいちゃん視点だったり、色々動きますがね)

 

そこで、私はこの作品に教えて貰った大切な物が二つあります。

まずは、川本ひなたちゃん。本作のヒロインとも言うべき子です。

この子です、可愛いですよね。

 

 

ひなちゃんに教わったのはこちら

人の為に笑う事の、難しさと大切さ。

 本編の中で、川本家の次女、ひなたちゃんは非常に良く表情の動く、可愛らしい子です。ですが彼女は、通っている中学校のクラスにおいて、とても辛い目に合うエピソードがあります(これは是非、まだ未読の方は、5巻以降を覚悟を決めて読んで欲しいです)

そんな時でさえ、ひなちゃんは、自分自身以外の誰かの為に、覚悟を決めて朗らかに笑うのです。それが零君の胸に強くささり、ひなちゃんと零君の絆を更に強くするきっかけにもなるのですが、私はそんなひなちゃんの態度を、本当に誇らしく感じました。

 

「中学生の女の子が出来る事だなんてとんでもない。こんな事が出来るなんて、本当にこの子は素晴らしい」

本編の中で、ひなちゃんの行為に対し、おじいちゃんが「よくやった!」と手放しで褒めるシーンがあります。私もそのシーンで、ボロボロ零れてくる涙を抑えることが出来ませんでした。

自分が本当に辛いときに、自分よりも人を優先する事ができるのか?

誰かの為に笑う事が出来るのか?

一生かけて、探り続けて生きたいテーマです。

 

そして、勝負の世界の方では、特に島田さんに強く共感し、思い知らされることがありました。

この方ですね。 

 

島田さんから感じることはこちら。

報われない努力は、無駄なものなのか?

島田さんとは、零君の先輩棋士、ライバルの二階堂の兄弟子にあたる棋士です。

薄くなっていく髪の毛と胃痛と常に闘いながら、勝負の世界で弛まぬ努力を続ける、いわば『凡人の星』だと思っています。

主人公の零君は、史上5人目の天才棋士と謳われるのも分かる通り、どちらかと言えば天才の部類です。

対する島田さんは、いつもいつも物凄い努力を重ねるが、後一歩の所でタイトルに届かなかったり、天才達が自分をいつも追い抜いていくのを、歯を食いしばりながら見送り、それでも、努力をやめない人です。

作品の中でも、島田さんのファンは多いかと思いますが、ふと私は思ってしまったのです。

「どうして、そんなに努力をし続ける事が出来るの?」

彼の人気の秘密は、不遇の立場にありながらその状況に腐らず、尚且つ大人の立ち居振る舞いが出来、不断の努力を積み重ねられる人柄の部分にもあるでしょう。彼を慕う人は、本作を読む人にも、そして作品の中にも数多く存在します。

いつだって諦める事が出来る、だけど、島田さんは彼らの為に頑張っている。

そう読むことも出来るでしょう。だけど、私は島田さんがこれだけ頑張るのは、

 

『努力は、報われる報われないで考えてはいけない。そして、頑張り続ける努力は、いつか報われるべきだ、そうでなきゃいけない』

 

と言う、羽海野先生の強く込めたテーマが隠れている気がしてなりません。

 

羽海野先生自身も、前作『ハチミツとクローバー』がヒットするまでは、不遇の時代を過ごしていたと言うのも聞きます。

そんな先生が描いているからでしょうか? 島田さんの努力は、いつか報われる為に、今の不遇の時代があるんだと、そう信じてやみません。

そしてだからこそ、今の自分が苦しい状況にある人の心を引き付けてやまず、沢山の人に支持されているのではないでしょうか?

みんな辛い、頑張っているのは自分だけじゃない、島田さんだって頑張っている! 自分だって、まだ頑張れるはずだ!

島田さんの努力がいつか報われるその日まで、私はこの作品を追いかけ続けようと思っております。

 

とにかく、人の心の深いところを掴んで離さない、とても素晴らしい作品です。

まだ読んだ事がない方、読んでいたけど、止まってしまってると言う方、この機会に是非また、ご一読ください!

と言う訳で、本日、2019年3月最終日に紹介しましたのは、

 

作:羽海野チカ先生の

『3月のライオン』でした。

それでは、今回はこの辺で!

ハクライトでした!

本当に大切な事は目には見えない『魔法遣いに大切なことーSomeday's dreamers』

もしも貴方が、今と変わらぬ現実世界で、
「魔法遣い」
と言う特殊免許を与えられたとしたら、何がしたいですか?

どうも、魔法大好きハクライト(@hakuraito00)です。

と言う訳で、今回紹介します作品はこちら。

原作:山田典枝先生 漫画:よしづきくみち先生
『魔法遣いに大切なことーSomeday's dreamers』

掲載誌情報

『魔法使いに大切なこと』と言う作品のコミックスは、

・第一作「Someday's dreamers」

・第二作「太陽と風の坂道」

・第三作「~夏のソラ~」

 の全3シリーズある作品です。

今回は、シリーズ第一作、「Someday's dreamers」について、触れていきたいと思っております。

第一作の『魔法遣いに大切なことーSomeday's dreamers』は、「月刊コミックドラゴン」にて、2002年6月号から、2003年2月号まで連載された作品です。
コミックス2巻、全7話で構成されております。

 

アニメ化した際に、主人公の菊池ユメちゃんを、女優の宮崎あおいさんが演じられたのも、当時としては話題になりましたね。

アニメ化もしましたし、小説も出ました。実写の映画化までしており、それのどれかに触れた事はあるけれども、どれかまでは分かんない、だけれども

「魔法遣いに大切なこと」

って言う印象的なタイトルだけは覚えてる、そんな方もいるかもしれません。

そう言う方が、懐かしい、また読んでみようかなと、折角だからこの機会に全部、と思ってもらえれば、ハクライトとしてはとても嬉しいです。

「魔法遣いに大切なことーSomeday's dreamers」簡単3行あらすじ

魔法能力者は、内閣府の外局に位置する魔法労務統括局(通称、魔法局)の元で管理され、規定の研修を受け、魔法士(魔法遣い)としての認可を受けなければいけないと定められている社会。

菊池ユメは、念願の魔法士になる為に、夏休みを利用して岩手県遠野市から上京し、東京にある「小山田魔法事務所」で研修を受ける事になった女子高生。

期待に胸を膨らませる彼女の前に立ちはだかるのは、魔法だけで全てを解決出来る訳では無いと言う重い現実だった。

もしも魔法を遣えたら、何がしたいですか?

皆さんは「魔法」に憧れた事はありますか?

手を触れずに遠くの物を持ち上げたり、炎を出したり、枯れてしまいそうな花を咲かせたり。

RPGが好きな方は、回復魔法、攻撃魔法、補助魔法、など、何が得意な魔法使いを入れるか?

果ては、白魔道士、黒魔道士、赤魔道士青魔道士など、色によって得意な魔法が違う上での戦略性など、正に魔法はゲームやファンタジーなどの世界では、必要不可欠と言っても過言では無い程、重要な役目を持っています。

 魔法が遣える社会になったら、どんな魔法を遣ってみたいですか?

貴方は、魔法を遣って何をしたいですか?

さて、問いかけてばかりでもなんなので、私の感想をバリバリ語りますとね、

まずは、声を大にして言います。

 

時折出るユメちゃんの方言がな~んまら可愛い!!

(」゚ロ゚)」カワイイ!

(」゚ロ゚)」カワイイ!

(」゚ロ゚)」カワイイ!

 

 興奮のあまり、私もお国の北海道弁が出てしまう始末(笑)

 

いやいや、本作は確かに、魔法と言う幻想的な文化が、現代の日本社会に受け入れられるとはどう言う事なのか? と言う社会派的な見方も出来ると思うんですよ。と言うかそれがメインなのかもしれません。

ですが私は、遠野から出てきた一人の純朴な少女が、小さい頃から魔法と言う素敵なギフトを与えられて、大人になって東京に出て来る訳ですよ。

遠野と言えば、昔から『遠野物語』等でも知られるように、妖怪の話や不思議な出来事や民話が多く残っている地でもあります。そんな素敵な地ではあるんですけれども、ユメちゃんからしてみれば、憧れの大都会東京に出てきた、一人の田舎者だと言う引け目がある訳です。

魔法があるだけの、明るい一人の女の子。田舎者だからと舐められる訳には行かない。ましてや、大好きな故郷を馬鹿にされる訳にはいかない。

そんな彼女が、普段は標準語で話そうとする彼女がですね、自分の本当に大事にしている魔法の事を、魔法士の事を貶された時に、プライドをかなぐり捨ててでも言わなきゃいけないと思ったとき、思わず方言が出てしまうんです。

後に彼女のその時の行動は、大きな悲劇を招くことにもなってしまうのですが、それは是非本編を読んで試してみて欲しいです。

大切な事は目に見えない。魔法を現実として扱うからこそ見える社会問題

『魔法遣い』

と言うキャッチーなテーマを扱いながら、その根底に流れるのはあくまで、少女の成長物語であり、魔法はあくまで一つの要素でしかない。

勿論、魔法が現代に受け入れられるとしたら、一体どう言う事なのだろう、と言う考察は、私は関心させられると同時に、魔法に対しての冷たい視線を送る人々を自分に重ね、反省しなきゃいけないな、とも思わされました。

 

そして遠野の美しく柔らかい自然を描いた、よしづきくみち先生の絵も見所の一つです。

この第一シリーズ自体は、コミックス2冊で完結なので、すぐに読み終わると思います。

 

まずはこれを入り口に、気に入って下さいましたら、『太陽と風の道』『~夏のソラ~』の三部作も、読んで欲しいなと思っております。

 

と言う訳で、今回紹介しましたのは

原作:山田典枝先生 漫画:よしづきくみち先生

『魔法遣いに大切なことーSomeday's dreamers』

でした。

 それでは、今回はこの辺で!

ハクライトでした!

繋がる絆の先に人の歴史がある『赤ちゃんと僕』

兄弟は居ますか? 姉妹は居ますか?

どうも、実はお姉ちゃんが欲しかったハクライト(@hakuraito00)です。

今回紹介しますのは、兄弟っていいな、噛み締めさせてくれた名作でございます。

作:羅川真里茂(らがわまりも)先生
『赤ちゃんと僕』

『赤ちゃんと僕』簡単3行あらすじ

小学6年生の榎木拓哉は、母親を事故で亡くし、父親と、まだ幼い弟のとの三人家族。

父親が仕事の間など、実の世話は拓哉の仕事、泣き虫でワガママで拓哉の手に負えない時もあるけれど、自分を慕う実への愛しさも感じ、拓哉自身も実と共に成長していく。

時事問題や社会問題などをテーマに、兄弟の有り方や、人の絆の大切さを柔らかく問い掛ける不朽の名作。 

掲載誌情報

1991年より、白泉社『花とゆめ』にて、1997年まで連載されておりました。

第40回、小学館漫画賞を受賞。

コミックスは全18巻。番外編を含め、全104話となっております。

現在では白泉社文庫として全10巻。愛蔵版として、全9巻が発売されている程、時代を超えて愛され続けている作品ですね。

(載せている表紙は愛蔵版のものです)

貴方に兄弟はいますか? それとも一人っ子ですか?

兄弟が一杯いると言う人もいるでしょうし、自分がお兄ちゃんか弟か、若しくはお姉ちゃんか妹かでも、気持ちは変わってくるでしょう。

かくいう私は生まれてこの方一人っ子で、その昔、兄妹の話を舞台台本として書いたときに、友人に言われた衝撃的な事を言われました。

「ハクライトさん、兄弟いないでしょう! 本当の妹がいたら、あんな話書けませんからね! 本当の妹ってのは、クソですから!!」

その時私は心の中で、

「いや、そんな訳ないだろ! 妹がいる人生なんてどんなハッピーライフだよ!」

と、かなり反発を感じた覚えがあります。

思い返すと、彼の家庭環境が随分と心配になりますが、兄弟の居ない私は、自分にお兄ちゃんや弟が居たら、お姉ちゃんや妹がいたらどうなって居たんだろう?

今よりも少しはしっかりした人間だったのかな? なんて思います。

 

兄弟がいる人は、どちらに感情移入をするかによって見方が変わるかもしれません。私はいつも、どうしても拓哉の方に感情移入をしてしまい、実の事を「どうしてこんなにワガママなんだ!」とイライラする事もあります。

だけど、時折見せる彼の笑顔や、問題が起こった時に必死で拓哉を守ろうとする姿。そして何より、母がいない事で、その分実をしっかりと育てなければと誓う小学生の拓哉に、じんと胸を打たれます。

ですが、もしも自分がもっと幼い時や、お兄ちゃんが居る環境で読んだとしたら、もっと実に共感したかもと思います。

大人になった今、晴海パパ(拓哉と実のお父さん)に共感したりして読み返しました。

号泣する、とにかく泣かせる、と言う作品と言うより、気が付けば胸の内に温かいものが広がっていく。ふと思い出す度に、この作品の大切さを思い出す。これこそが、「赤ちゃんと僕」が長年読継がれている秘訣だと、私は思います。

大切なものを守る為に、貴方だったらどうしますか?

驚きましたよ。久々に読み返してみたら、連載終了から今年2019年で、二十年なんですね。

いやいや、全然色褪せない。

拓哉の小学校や実の幼稚園で起こる問題は、現在でも充分社会で起こっている問題。そう考えると、この20年の間、教育機関における問題は、過激度を増す事はしていても、本質的な解決は迎えていないのだなと、歯痒くなる思いもします。

アニメのみ見てる方へ、ハクライトのおすすめの話

赤ちゃんと僕は、アニメ化もがっつりされており、お兄ちゃん拓哉は山口勝平さん(ワンピースのウソップなどですね)で、実は坂本千夏さん(となりのトトロのメイなどが有名ですね)なので、覚えてる方も多いと思います。

アニメは見てたから、漫画は読んでないけど内容は知ってるよ!

そんな皆さんに、是非この話を読んで頂きたい。

第69話から第73話。
原作コミックスだと第13巻。白泉社文庫版と愛蔵版だと第7巻になります。

この5話は私にとって、非常に特別な話です。何度も何度も好きで読み返し、私の中で「赤ちゃんと僕」と言えば、ここが肝だと思っております。

どんな話かと言えば、拓哉と実の父、春海と今は亡き母、由加子の出会いから、結婚までを描いた話なのです。

 

この話が私は本当に大好きで、今まで由加子は、拓哉や実の思い出の中に微かに出てくる程度の存在だったのですよ。だけど、その父と母の歴史を紐解かれる事によって、拓哉がどれだけ愛されて生まれてきたのかを、つぶさに感じ取ることが出来るのです。

そして、この話がしっかりとしみ込んだ上での、最終巻のラスト。

ボロボロボロボロ、涙が本当に止まりません。

あの全ての話がここに繋がっているんだ、実は、拓哉は、今でも確かに愛されているんだと感じ、それと同時に、自分も大きな温かい物に包まれて、ここまで生きて来れたのかもしれないと、そう思える作品となっております。

それと共に、母と父の繋がりがあったからこそ自分がいる。

絆の先に人の歴史がある。

それを感じて頂ければ、嬉しいです。

連載終了から愛され続けて二十年。

まだ未読の方、特に男性読者には多いかもしれません。

この機会に、是非一度「赤ちゃんと僕」を手にとってみて下さい。

そしてもし、同じ様な気持ちになってもらえたら「13巻良かった」と言ってもらえたら、私は幸せです。
そして、久しぶりに読み返してみようと思った方、きっと視点が変わっている筈です。是非大人目線で、読み返してみて下さい。

と言う訳で、本日紹介しましたのは、

作:羅川真里茂先生

「赤ちゃんと僕」

でした。

それでは、本日はこの辺で!

ハクライトでした!

耳で聞く文学、ようこそ朗読の世界へ『花もて語れ』

幼い頃、寝る前に本を読んで貰った事はありますか?

どうも、朗読も読み聞かせも大好き、ハクライト(@hakuraito00)です。

さて、今回紹介します漫画はこちら。

作:片山ユキヲ先生
『花もて語れ』

『花もて語れ』簡単3行あらすじ

両親を亡くし、地方の叔母の元へと引き取られた、小学一年生の佐倉ハナは、引っ込み思案で口下手、先生や友達ともまともに会話が出来ない

そんな彼女が出会ったのは、教育実習生の折口柊二と、彼に薦められた朗読

学芸会の出し物のナレーションを担当したハナは、その後22歳で上京し、ある事件をきっかけに、再び朗読と向き合う事になる。

 

掲載誌情報

『月刊!スピリッツ』2010年3月号にて読み切りを掲載後、同誌で2010年6月号から2012年2月号まで連載。
その後、雑誌を『ビッグコミックスピリッツ』に移し、2012年25号から、2014年35号まで連載。
全13巻、112話で完結しております作品です。

朗読と言う地平だからこそ広がる想像の裾野

さてさて、今回は「朗読」をテーマにした作品、「花もて語れ」です。

まずは皆さんにご質問。

朗読に触れた事がありますか?

あると答えた方は、結構がっつり触れている方が多かったり、自らが読み手だったりする方も多いでしょう。

無いと答えた方にこそ、是非朗読の入り口として、この漫画を手にとって欲しいと思っております。今は若い役者や、声優さんなど、朗読を聞ける場面もかなり増えました。堅苦しく考えず、エンターテイメントの一つとして、受けとめて欲しいと思っております。

 

また、幼いお子さんがいる方は、お子さんにどんな本を読んであげていますか?

絵本に限らず、物語を声に出して読むと、自分で黙読する時とはまた違った世界が広がる時があります。読んだ人の世界を通して入ってくる物語だからこそ、その人の想像力の断片が、盛り込まれているからかもしれません。

料理をお母さんが作ったときに、自分が作った時とは同じ味にならないのは、お母さんの手心や思いが、味に伝わっているから、と言う説もありますよね。

読み手が変われば、聞き手の中に広がる世界も変わる。朗読の魅力の一つであり、可能性の一つであるとも言えます。

現代まで生き残っている朗読と言うジャンル

その昔は、本と言うものは『音読』が基本でした。書物と言うのは高価な物であった事もあり、知識は共有するものであったり、又は声に出して読みながら、目と耳で同時に情報を仕入れた方が、深く頭の中に入ってくると言う認識だったのでしょう。

受験勉強とかでも、声に出しながら問題を解いていく手法がありますよね。

今となってはそんな人がいたらびっくりですが、電車の中とかでも平気で、本を声に出して読む方が沢山いたそうです。

時代は変わり、本は誰でも手に取れる時代になりました。そうなる事で、声に出して読む「音読」より、より素早く読むことの出来る「黙読」に、読書は変わっていきました。(まぁ、五月蝿いからやめてほしいって意見もあったのでしょう)

 

では、現代において、朗読と言うものはどう言う風に変わっていったか?

 

最近では、自己啓発本やビジネス本のリーディングブック(耳で聞く本)と言うのも増えてきたり、音読の需要が無くなった訳ではありません。

その上で、朗読と言うのはやはり、エンターテイメントであると、この作品を読んで感じます。

目で読む事で更に広がりを見せる朗読の世界

本書の中に出てくる作品は、『宮沢賢治先生の「やまなし」』『新美南吉先生の「ごん狐」』『斉藤隆介先生の「花咲き山」』など、幼い頃に絵本として触れた事があるような作品も、いくつも出てきます。

 

そしてここが、主人公佐倉ハナの朗読の才能たる所以なのですが、彼女が本を読み、声を出した瞬間から、客席に座っているお客さんは、一瞬にして彼女が読んでいる本の世界に吸い込まれて行くのです。

息遣い、計算された間、表情、その一つ一つの意味などを観客と読み手が共有した瞬感に起こる、圧倒的な程の物語への没入感。読書に集中している時に起こる、世界の広がりを、会場全体で共有出来る一体感。それは、他のどんなエンターテイメントにも引けを取らない、朗読ならではの表現の世界であると思わせてくれます。

 

正直言って、最初は私も「漫画で朗読ってどう言う風になるの?」なんて思っていたんです。

ですが、本作は朗読を読む際の教則本としても相応しい程、視点の移動や、読解方法など、詳しく書かれています。

そして、ハナや、後に出てくるハナの親友の朗読シーンなど、涙がぼろぼろと零れてくる程の共感力があります。

感動や悲劇では無い、温かく深い優しさを感じる故に泣いてしまう。そう言う涙が自然と流れてくる作品です。

 

「声に出して文学作品を読むためには、その意味を正確に把握しておく必要がある」と言う観点から、本書は描かれているそうです。だからでしょうか、一つ一つの物語、含め、出会うべくして出会った一人一人の事を、ハナは大切に扱っているように感じます。

それは、人間一人一人が、一つの物語なんだと、本書では言いたいのかもしれません。

 

そして作品の途中、ハナは再びかつての恩師、折口柊二と再会します。

朗読で紡がれた彼らの出会いが、どう言った結末を迎えるのか、是非ともご一読して貰いたい作品です。

 

朗読と言うジャンルに触れたことが無い方こそ是非触れて欲しい、そして、もっと朗読の裾野が広がればいいと、一人の本読みとして、そう願います。

 

今回紹介いたしましたのは、

作:片山ユキヲ先生

「花もて語れ」でした。

それでは、今回はこの辺で。
ハクライトでした。

 

八十歳の自分を想像出来ますか?『傘寿まり子』

どうも、100まで生きるぞ! ハクライトです(@hakuraito00)

そんな訳で、今回紹介しますのは、こちらの作品。

作:おざわゆき先生
『傘寿まり子』

『傘寿まり子』簡単3行あらすじ

4世代の同居生活を送る、80歳のベテラン小説家幸田まり子は、友人の葬儀に呼ばれるが、彼女が自分と同じ様な環境で、誰にも知られず孤独死をした事にショックを受ける。

「迷惑をかけるつもりじゃなかったのよ。自分でもつらいのよ。どうせこの先長くない人間なのに、まだ生きてて、ごめんなさいって……」

責任逃れをする彼女の娘に葬儀場でそう言った後、まり子は家族に迷惑をかけまいと置手紙を残し、80歳にして独立を決意し家を出るのであった。

 

傘寿と言うのは、80歳の事ですが、漢数字で「八十」と縦書きすると、「傘」の略字である「仐」に似て見えるから、と言うのが由来だそうです。

掲載誌情報! 

2016年12号より、女性向け漫画雑誌「BE・LOVE」にて連載開始。
2018年には、第42回講談社漫画賞、一般部門を受賞。
2019年3月現在、コミックス9巻まで発売中です。

貴方は今、おいくつですか?

これを読んでいる貴方は、今おいくつですか?

若い方も入れば、人生も半ばを過ぎた、と言う方もいると思います。

それでは、

貴方が八十歳になった時、何をしていると思いますか?

今と同じ様にバリバリと言うのは、体力的に無理かもしれません。

隣には誰がいるでしょう?
愛すべき配偶者でしょうか?
それとも、家族?
一人きりですか?

仕事は流石にしていないでしょうか?

お金の心配など、どうでしょうか?

私なんかは、先の事を考えれば考える程暗くなってしまったりするのですが、人生100年時代、八十歳で
「まだまだ人生半ば」
と考える未来も、今の時代、決して突飛な発想では無いでしょう。

 

八十歳の、パワフルな自分を想像出来ますか?

80歳のまり子さんに襲い掛かるのは、苦難の連続。80歳で一人住まいを暮らそうとするのも、独居の老人に貸してくれる不動産会社は中々無かったり、かと言ってホテルに何泊もするのはキツイ。ましてや若い頃の体力も無いから、野宿なんてとても無理。

それでもまり子さんは、持ち前の集中力で、ネットカフェで原稿を上げたり、80歳にして新たな恋に目覚めたり、新しい同世代の友人を作ったり、新たなプロジェクトに携わったりするなど、もう大忙し!

自分が80歳になった時の事を想像すると、とてもここまで動けるとは思えない、と感じる程、まり子さんのパワフルさに驚きます。

特にすごいのが、目の前の新しい技術や、今まで自分が知らなかった若者の文化にも、躊躇無くガンガン突っ込んでいくところ! とにかく物怖じせず、最近はスゴイのね、私でも出来るかしらと、色んなものに首を突っ込んでいく。そして、80歳のおばあちゃんと言う存在が、周りの人たちから無駄な警戒心を取り除き、気がつけばまり子さんは沢山の人に必要とされる存在になっていくのです。

それはまるで、若い頃にバリバリ作家として活躍していた時代を彷彿とさせるような仕事ぶり。勿論、体力的な無理は利かない部分もありますが、読んでいる内に段々、

「まり子さんがこんなに頑張ってるんだから、自分ももっと色んな事が出来るはずだ!」

と、元気をもらえるようになっているんです。

「女性が元気なのは、国が豊かな証拠です」

『もののけ姫』アシタカの台詞ですが、大阪のおばちゃん達のパワフルさを見ていると、その力強さに圧倒されつつ、この国はまだまだ元気だなと思える事があります。

今の時代、不景気不景気と聞いて、未来に興味も期待も持てない若者が増えているような気がします。ましてや自分の老後の事なんて、考えてもどうしようも無い。そんな方にこそ読んで欲しい。

老後でも、80歳でも、まだまだやれるんだと言う元気を、まり子さんから貰って欲しいです。

この作品のヒットは、メインの読者が40代~70代の女性と言う、本来そこまで漫画を読む層では無い方々の心を捉えた事です。同じ様に、毎日家事や育児で疲れていたり、子供が大きくなった後は夫の世話ばかり。
若い頃はもっとキラキラした生き方を想像していたのに、日々を生きるのに精一杯、そんな女性の心を鷲づかみにしたのが、本作なのでしょう。

是非私は、パワフルな女性達に負けないように、男性にもパワフルになって欲しい。同じ様な、40代~70代の男性には、女性向け漫画として販売されている本作は敷居が高いかもしれませんが、是非読んで欲しい一作となってます。

次々起こる家族の問題。
新プロジェクトの立ち上げ。
苦難は伴うが、平坦な道より生き甲斐を感じる。晩年になったとしても、まりこさんの様に、そう感じて生きていきたいものです。

100まで生きるぞ!

 

と言う訳で、今回紹介しましたのは、

作:おざわゆき先生

『傘寿まり子』

でした。

それでは、今回はこの辺で。

ハクライトでした。

裏切り者と共に少年少女は母星を目指す『彼方のアストラ』

スターウォーズなどに代表されるハードSFは好きですか?

どうも、宇宙も大好きハクライト(@hakuraito00)です。

前回の『外天楼』を

『ミステリー×ソフトSF(現代から少し未来の話)』とするなら、今回紹介するのは

『ミステリー×ハードSF(スペースオペラなどの壮大なSF)』でしょう。

と言う訳で、今回紹介しますのはこちらの作品。

作:篠原健太先生 
『彼方のアストラ』

『彼方のアストラ』簡単3行あらすじ

西暦2063年、主人公のカナタ・ホシジマを含めた9人のケアード高校の生徒は、教師に引率され、惑星「マクパ」で5日間のキャンプ生活を行うはずだった。

だが、キャンプ地で光り輝く奇妙な球体の中に吸い込まれた彼らは、遥か5000光年も離れた宇宙の彼方に突如放り出されてしまう。

偶然近くにあった宇宙船の中へと逃げ込んだ彼らは、仲間と母星への帰還を誓う。

 

ちなみに前回の『外天楼』

(ミステリー×ソフトSF(現代から少し未来の話))

はこちらの記事になります。

www.hakuraito.work

掲載誌情報!

集英社さんのWebコミック配信サイト『少年ジャンプ+』にて、2016年5月9日から、2017年12月30日まで連載。
全5巻。49話にて完結しました。

『マンガ大賞2019』の大賞を受賞したとの事なのですが、いや、納得の受賞ですよ。

私はジャンプ+で連載している時にリアルタイムで読んで、その後にコミックスで一気読みと言う、隙を生じぬ二段構えだったのですが(ジャンプらしいでしょ)

本当にページを捲るたびに

「え? マジかよ!」

「へ? マジかYO!!」

「ほぁあ? MA・JI・KA・YO!!」

と、一話ごとに驚きの展開を見せてくる、正に毎週のアンケートを意識したかのような、

JUMP漫画のお手本

 と言うに相応しい作品になっていると思います。

篠原健太先生と言えば、「週刊少年ジャンプ」で連載しておりました

「SKET DANCE」が有名ですね。

 

『SKET DANCE』も、非常に作りこまれたプロットに、個性的なキャラクター。数多くの小ネタに、何故其処まで作りこんだんだ! と思われる程秀逸なオリジナルゲーム。

そして何より、明かされるボッスンの過去、ヒメコの想い、スイッチの覚悟など、涙無しでは読めないシーンも多い、こちらも屈指の名作となっております。

少年少女は母星を目指す、裏切り者を探しながら

さて、話を『彼方のアストラ』に戻しましょう。


皆さんは、古典名作SF、萩尾望都先生

「11人いる!」

と言う作品をご存知ですか?

名門、宇宙大学の最終テストが、宇宙船の中での10人の共同生活を送ると言うもの。お互いに生まれた星も違う宇宙人10人が、共に暮らす事で、協調性を見るというテストだが、蓋を開けてみれば、メンバーは11人いた。

この試験の真意とは。そして、本来のメンバーでは無い「11人目」の正体とは?

私は最初に彼方のアストラを読んだ時に、この作品の影響を根強く感じているなと思いました。

命の危機から無事逃れた全員に走る緊張感。

そうです。作品の冒頭、少年達は気づく訳です。

 

「こんなに上手く、9人もの人間を宇宙空間に放り込む事が本当に出来るのか?」

 「そもそも、宇宙服を着ていて、更にはすぐ近くに宇宙船があったから良かったようなものの、本来なら宇宙空間に放り出された時点で、全員死んでいたんじゃないのか?」

 「もしかしたら、俺達全員を殺そうとして、自分も死のうとした裏切り者が、自分達の中にいるんじゃないのか?」

 

これから旅を共にする、信頼しなければいけない仲間を、まず疑わなければいけない。そんな疑心暗鬼犇く中、彼らの母なる星への旅は始まります。

最初は各々、中々打ち解ける事が出来ません。輪から外れる者、引っ込み思案な者、殺される前に裏切り者を見つけ出して殺してやろうと言う危険思想の者、様々です。

ですが彼らは、幾多の困難を乗り越えて行く事によって、徐々にお互いが信頼を寄せていく事になります。

明かすことの出来なかった秘密を皆に明かす事で、変わっていく仲間も居ます。彼らの友情は強固な物になっていきます。

仲間の絆が強くなればなる程、疑念は沸いては沈んでいきます。

 

「本当は、裏切り者なんていないんじゃないのか?」

 

自分達の考えすぎだと、そう思いたい。

だけど、頭の片隅にはいつも、もしかしたらこいつが? なんて言う歪んだ思想がちらりと頭を擡げます。

今作は、非常に素晴らしい友情物語でありながら、絶妙のバランスでのミステリー要素を兼ね備えている作品です。 

そして、徐々に明かされていく秘密の中で、物語中盤、読者さえも気づくことの出来なかった驚愕の事実が明かされる事になり、そこから更に、物語は加速度を増すのです。 

何処かで見た事がありそうで、何処でも見た事が無い作品。

本作のシチュエーションを見て、NHKで放送された

「無人惑星サヴァイヴ」

を思い出される方も多いのでは無いでしょうか?

こちらも根強いファンの多い作品ですよね。

近未来の修学旅行の最中、無人の惑星に放り出された少年達のサバイバル漂流記です。

宇宙での友情・遭難ものでは、こちらを上げる方も多いと思います。こちらを好きな人なら、絶対に楽しめる作品となっております。

 

そう、類似品を上げるのなら、多くの作品が出てくる事でしょう。

『彼方のアストラ』と言う作品は、もしかしたら、設定やギミックだけに注目してみれば、どこかで見たことのあるような、よくある作品に映るかもしれません。

しかし、ハードSFがテーマの作品を上げるならば、それこそ昔から数多くの名作が生まれたジャンルであります。

ミステリー要素も、友情をテーマにした冒険話も、その限りではありません。

ですが、昔から何度も使われたかもしれないテーマを絶妙に混ぜ合い、ワクワクと驚愕の連続を私達読者に与え、圧倒的なまでの読ませる力を持った作品に仕上がっています。
ここは、もう篠原健太先生の見事な手腕の成せる技だと言わざるを得ません。

もしも設定やあらすじだけ聞いて
「どこかで読んだ事ある作品だな」
と思った方にこそ、是非『彼方のアストラ』を紐解いて欲しいです。

古典的ハードSF×友情×ミステリー=大傑作 

知っているはずなのに、まるで読めない展開。

ありふれているはずなのに、共感しやすいキャラクター。

騙されないぞと覚悟を決めて読むのに、何度も不意打ちパンチを食らう爽快感。

どこかで読んだ事あるはずなのに

「こんな作品見たことない


と、読了後、貴方は思うはずです。 

古典的名作の要素とよくあるハードなSE物と、何処にでもあるような友情物を組み合わせた作品。

それが、こんなに面白い大傑作になるのですから、つくづく篠原健太先生の技量に驚愕せざるを得ません。

果たして、裏切り者とは誰なのか?

彼らを吸い込んだ球体の正体とは?

そして、彼らを待ち受ける運命とは?

読者すら呆気に取る、驚愕の事実とは?

 

マンガ大賞2019を受賞した事で、これからきっとメディア化などで活気付いていく事でしょう!

その前に、是非一度読んでみる事をオススメします。

全五巻と言う短い作品の中で、貴方は何度も衝撃を受ける事でしょう。

 

と言う訳で、今回紹介しましたのは、

作:篠原健太先生

『彼方のアストラ』

でした。

それでは今回はこの辺で。

ハクライト(@hakuraito00)でした。

再読時は1コマたりとも油断出来ない『外天楼』

皆さんは、短編よりも、長編連載を良く読む方ですか?

どうも漫画大好きハクライト(@hakuraito00)です。 

ONE PIECE、HUNTER×HUNTER、名探偵コナン、はじめの一歩etc。

それこそ販売部数がNEWSになる程売れまくってる漫画は、それだけ巻数も長い場合もありますよね。
ではコミックスが一冊だけに収まっているもの、所謂短編、一冊物は長編に比べて劣るのか?

今回は見事に一冊に収められた芸術とも呼べる作品をご紹介しましょう。

作:石黒正数先生
『外天楼』

 

 

『外天楼(げてんろう)』簡単3行あらすじ

ロボットや人工フェアリーなど、近未来の技術を根底の世界観に描き、ギャグも本格ミステリーも交えたショートSF全9話で送る連作短編集。

良作ミステリーの1話が、1コマが、徐々に大きなうねりとなって、ネタバレ厳禁の衝撃のラストへと繋がる。

猛烈に襲い掛かる戦慄と驚愕が、貴方をもう一度、今度は1ページ、1コマも見落とさぬ様に、再び外天楼の扉を開かせる。

 

掲載誌情報!

小説誌『メフィスト』で2008年9月号より連載しておりました、漫画作品でございます。
(小説誌で漫画連載って、あるんですね)
 

石黒先生と言えば、日常コメディの中に、ミステリーやホラーなど様々な要素を織り込んだ

「それでも町は回ってる」

「このマンガがすごい2019オトコ編」で見事一位に輝いた

「天国大魔境」

(現在連載中)等が有名ですね。 

勿論この二つもとってもいいんですけど、石黒正数先生と言う漫画家さんに触れた事がまだ無い人が居ましたら、是非この一冊から触れてみて下さい!

特に、

SFやミステリーが好き

と言う人は、是非読んで欲しいです。

数限りなく潜まれた伏線。二度目はがらりと姿を変える怪作。 

細かい部分が本当に良く出来ている為、初見では気づかない伏線が物凄くありますし、考察サイトも沢山あります。一話ごとに主人公も変わるし、キャラクターの数も本当に多い。

「よっしゃ、どんな謎が潜んでいるのか楽しみだ!」 

勿論、そうやって気合を入れて見るのもありかもしれません。(ミステリー好きの方に多い見方かもしれませんね)

ですが出来れば最初は、なーんにも前情報も先入観も無しで読んでみて欲しいです。

その方が、最後の驚きをより一層新鮮な物として楽しめると思うからです。

 

最初の話は下らなさ過ぎて、女性の読者さんは「なんじゃこりゃ?」って思っちゃうかもしれません。なんせ、男子中学生3人が「お宝本(敢えてのこの表記)」を探して右往左往している話がメインですからね。男性諸君には「あるある」と思われるネタかもしれませんけど、女性陣にはちと辛いかもしれません。

でもそこを乗り越えて読んでいくと、あら不思議、最後には立ち上がれない程の衝撃に襲われている筈です。

 

事実私は、外天楼の初見時、あまりの衝撃に暫く呆然として、椅子から立てませんでした。発売されたのが2011年なんですが、私は2012年明けてすぐ位に読んだんですね。

 

もうね、新年早々、今年最高の作品に出会ってしまった感が満載でしたよ!

当時仲の良かった友人の何人にも押し付けて、読ませましたね。とにかくね、読み終わるまでは何にも言えない程緻密な物語で、読んだ事の無い人間に、これを私の口から説明してしまうのはあまりに残酷であるし、勿体無いと感じ、だけど語りたい、この本について語りたいと思い、その結果友達に読ませまくったのです。語れる人間を作りまくった訳ですね!

元々『それでも町は回ってる』の読者ではあったのですが、それとはまた別格、もっと毒性の強い、もっと衝撃の強い、長編で見せる石黒先生とは違う、短編だからこその、凝縮された石黒節が堪能出来ます。

そして始まる、驚愕の二週目。

「これも伏線だったのか!」

「あれも伏線だったのか!」

ジェットコースターだと思っていたアトラクションが、実はお化け屋敷だった。

私自身、それ程の衝撃を受け、自分の漫画の読み方の甘さと、石黒正数と言う作家の凄まじさに震えたものです。

出来ればこれを、一本の劇場用映画として見たい(願望)

ぶっちゃけ、アニメでも実写でもなんでもいいとすら思ってます。先ずは自分が楽しんで、勿論二度見て、それを何も知らない友人に見せてあげたい。
そして見終わった後、共に深く語りたい。

そう、あの伏線はこの為だった、この伏線はこの為だったと、たった一冊に詰め込まれた芸術のと呼べる程の多さの伏線の嵐を、共有したい、語り合いたい、それを同時に劇場で味わいたい、そんな気分にさせてくれる作品なのです。

もしも既に読んでもらった方、私と同じ様に

「分かる、映像でも見てみたい!」

と思って下さる方は、私と本の趣味が似ているかもしれません。
外天楼が映像化した際は、是非共に観に行き、寝食を忘れて語り合いましょう!

と言う訳で、今回紹介致しましたのは、

作:石黒正数先生

『外天楼』 でした。

 

それでは今回はこの辺で。

ハクライト(@hakuraito00)でした!

少女に捧げる少年の願いは一つ『一日三食絶対食べたい』

もしも自分が突然サバイバル生活を送る事になったらどうしますか?

どうも、漫画の知識で生き抜く気満々のハクライト(@hakuraito00)です。

サバイバルにも色々ありますが、今回はもしも世界中が突然

氷河期

を迎えたら、と言う事で今回紹介しますのはこちらの作品です。

作:久野田ショウ先生
『一日三食絶対食べたい』 

『一日三食絶対食べたい』簡単3行あらすじ

世界には氷河期が訪れ、残された人々氷の下には閉ざされたまま、何とかシェルターなどの内部で生活をしていた。

主人公のユキは、すぐに弱音を吐く甘ったれのダメ人間だが、とある理由で共に生活をする事になった少女リッカが、日に日にやせ細っていくのを見て決心する。

貴方が氷河期に放り込まれたら、大事な人の為に、一日三食の食事を提供出来ますか?

掲載誌情報! 

久野田先生は、2017年6月号の「月刊アフタヌーン」に掲載されました、2017年四季大賞・春のコンテストにて、『宇宙のライカ』で大賞を受賞され、漫画化デビューしました。

受賞後第一作として、満を持して描かれた本作の読み切り版が、掲載紙『月刊アフタヌーン』2018年2月号にて大反響。そのまま連載となり、現在は講談社のWEBコミックアプリ『コミックDAYS』にて絶賛連載中です。

今回のコミックが、久野田先生の初書籍となります。

ハクライトは新人漫画家さんを応援しております(強調)

 

その時、貴方ならどうしますか? 貴方に何が出来ますか?

もしも突然、天変地異が起こったら?

もしも突然、ゾンビが街を占領した?

もしも突然、ゴ○ラが街を襲ったら?

 

想像してみて下さい。貴方ならどうしますか?

 

俺ならこうする

私ならこうする。

僕ならこうする。

拙者ならこうするでござる。

 

情や本能、いざと言う時に自分は一体どんな行動を取る事が出来るのか?

様々な作品において、趣向を変えて共通する、非常に面白く、興味深いテーマだと思います。

その根底には、人間の本質が潜んでいる。

さてそれでは本作『一日三食絶対食べたい』の事に触れていきましょう。

いやね、このユキ君と言う主人公がまぁ甘ったれで、氷河期が訪れて世界が大変だ、これからどうしよう、とか言ってる時ですら、自分に向いている仕事じゃないとか、危ない目にあったらどうするんですかとかグチグチ言ってる訳です。

俯瞰で見てるからこそ

「いや、そんな事言ってる場合じゃないだろ!」

って思うんですけどね、でも、こいつもこいつで頑張ってるは頑張ってるんだよな~、って感じた時、ふとした瞬間、思う訳ですよ。

大きい声ではとても言えないですけど、

 

「あ、こいつ、私だわ」

 

って。

変わってしまった現実を受け入れる事の難しさ。弱さ=無能では無いと言う事。

世界がどうなっているって言う現状をすぐに受け止める事が出来ず、平和だった時代に心がしがみ付いている。でも彼には、幸か不幸か、守らなければいけない存在が出来たんです。

リッカの為に、本当は嫌だけど、働きたくなんてないけど、自分が頑張らないとダメなんだと、自らを奮い立たせる姿を見て、思わず応援したくなるんです。気が付くと、泣きそうな位共感しちゃってるんですよ!

 

「お前ダメだけど、ダメなりに、ちゃんと頑張ってるよ! 偉いよ!」

 

それはもしかしたら、自分も本当はこういう風に、誰かに応援して欲しいのかもしれない。

「どうして上手く出来ないんだろう」

とか

「自分って本当にダメだな」

とか思う事があったとしても、

「でも頑張ってるよ、偉いよ」

って、誰かにそう言って欲しいのかもしれない。

 

そんな事を気付かせてくれて、心から励ましてくれる気になる、そんな優しい作品だと、私は感じました。

 

キャラクターの性質にばかり触れましたが、崩壊後の世界を生き残る為の知恵や、どういう生活をしているかというディテールも細かく表現されていて、もしも氷河期が来た時の備えになるかもしれません(来ないに越した事は無いですけどね)

 

リッカとユキは、共に生活をしていますが、お互いの素性などは良く知らないままだし、それは話せる時が来たらぽつりぽつりと明かされていくのでしょう。

 

一巻が出たばかりの新作ですが、これから更に面白くなっていくと思います。

未読の方、是非一度手にとって見てください。

 

そして、本当の意味で、サバイバルを学びたい場合は、さいとう・たかを先生の

「サバイバル」をオススメします。

こちらはもっとシビアな世界観を、ガチで生き抜く為の方法が色々と載っております。

なので、温かい少女の言葉や、厳しくも頼りになる先輩などの存在は期待しないで下さい。

 

閑話休題。

 

何はともかく、これから大きく期待の出来る新人作家さん。応援の意味も込めて、一度読んで頂ければと思います。

 

という訳で、今回紹介しましたのは、

久野田ショウ先生の

『一日三食絶対食べたい』

それでは、今回はこの辺で。

ハクライト(@hakuraito00)でした!

 

御託はいい!聴け!想像しろ!『波よ聞いてくれ』

皆さんはラジオとか聞かれますか? 特に深夜ラジオ!

どうも、ラジオも漫画も大好きハクライト(@hakuraito00)です。

ラジオ好きの皆さんに、今回紹介するのはこちらの作品。

作:沙村広明先生
『波よ聞いてくれ』

『波よ聞いてくれ』簡単3行あらすじ

札幌に住む鼓田ミナレ(こだみなれ)はある日、酒場で出会った地元FMラジオ局のディレクター・麻藤(まとう)に密かに録音された失恋トークを、翌日の生放送で流されてしまう。

激昂したミナレはラジオ局に乗り込んで行くが、麻藤の口車に乗せられ、そのまま深夜の生ラジオで喋り始めてしまう。

ミナレが放つ、毒も薬も満載の劇薬マシンガントーク、これに打ち抜かれたなら、きっと深夜ラジオが聞きたくなる!

 

掲載誌情報!

講談社『月刊アフタヌーン』にて、2014年9月号から連載開始。
2019年3月現在も、絶賛連載中です!

木村拓哉さん主演で映画化もしました

「無限の住人」

 

沙村広明先生最新作ですね。

作風が違いすぎてびっくりした!

「Twitterってラジオだ!」

ニッポン放送の吉田尚記アナウンサー(愛称はよっぴーさん。マンガ大賞の立ち上げでも有名な方ですね)の名言ですね。

確かに、ラジオツイッターって、仰るとおりにとっても相性がいいんですよね。
ツイッターのハッシュタグを活用してリアルタイムでネタを拾ったり、更に今はメールもあるから、生放送の利点も思う存分生かせる。その場でパーソナリティーが募集した小ネタやアイディアを、ガンガンリスナーに募集をすると、とんでもないメールが来たりして、番組がどんどん面白くなっていく。

リスナーとパーソナリティーが共に番組を作り上げていく

聞き手と喋り手、双方向で作り上げるストーリー性のある番組が、テレビには無い、ラジオならではの文化だと思うんですよ。

そしてそして、深夜ラジオの更なる魅力は、普段テレビ等ではちょっと見れない、歌手や芸人さんの、ラジオパーソナリティーのより素に近い部分を感じる事が出来るので、他のメディアよりも距離の近い媒体であると思います。

それこそ、喋り手が『パーソナリティー』と言われる程、喋り手の『パーソナル』を聞き手がより近くに感じられる。

これが圧倒的な

ラジオの利点

だと私は思います。

私は昔はあんまり聞いていなかったのですが、ここ近年改めて、深夜ラジオの面白さを知って、がっつりはまってますね。深夜ラジオで言えば、TBSJUNKやオールナイトニッポン辺りは、本当によく聴いています。 

(とんでもなく余談ですが、ラジオ日本で土曜日の27時からやってる『マシンガンズのネガポジ』って番組がマジで最高ですよ。

ある日偶然聞いた、顔も知らない誰かの喋りがめちゃくちゃに心に刺さる、映像が無いからこそ、胸の奥底まで声が響いてくる、そんな体験したことありませんか?

もしその奥底に響く声が、本作主人公の鼓田ミナレだとしたら……。

毒にも薬にもなる劇薬ラジオ漫画、だけど中毒性は抜群!

とにかく沙村節と言うのか、ミナレ節と言うのか、畳み掛ける言い回しがひたすらに絶妙過ぎて大好き。 

テンポの良さと小気味良さ。
他人事だからこそ甘露として聞ける、不幸に対する愚痴と言う最高の味の蜜。
いくらでも話は聞いて居たい、それなのに絶対に傍には置いておきたくない、お友達としてなら間違い無く面白いのに、

「あ~すいません、それ以上はちょっと近づかないでもらえますか?」

と思わせる、不快感を感じさせすぎない絶妙なウザさ。 

 

「いやぁ~~~ッ、25過ぎてから男と別れるのってキツいですね!! 意味合い変わりますね

 

「人間をカテゴライズするほど理解から遠い作業は無いと思います。『九州男児は亭主関白』『道産娘は気が強い』『東京もんは冷たい』『B型はクソ』それらの言葉のどこに個々の人格への興味があるでしょうか?」

 

「お前にとって世の中はチュッパチャップスか何かなのか? なめすぎだろ、ペロペロ

 

 

こんなのがアドリブでサラサラサラ~っと出てくるんだから、そりゃあ

「こいつ、喋りの才能あるな!」

って思いますよね。

 

同時に

「まぁ、深夜じゃねぇと流せねぇな」

とも確かに思いますけどね。

 

御託はいい! 聴け!! 想像しろ!!!

最初は深夜ラジオならではの色々な試みや、とんでもな企画、そしてただただミナレの力量を試していくような、麻藤さんの無茶振り!

それに対し、毒づきながらも食らい付いていき、いつかこのまま行けば安定した生活を送れるんじゃないかと言う淡い期待を貪り、無茶振りをこなしていく。

そして徐々に顕わになっていく、

鼓田ミナレの驚異の人間性。

パーソナリティーのパーソナルが面白い!

ラジオ番組の面白さとは、ぶっちゃけ、これだけあればいいのかもしれませんね(極論)

 

深夜ラジオ、特に生放送のラジオを聴いたことがある人、今でもリアルタイムで聞いている人は、恐らくがっつりはまるであろう本作品。

とにかく一度手に取ってみて欲しい作品です。 

そして、この本をご一読された暁には、是非とも深夜にチューナーを合わせ、無法地帯一歩手前の深夜ラジオの世界に、足を踏み入れてみてはいかがでしょう?

 

と言う訳で、今回紹介しましたのは、

作:沙村広明先生『波よ聞いてくれ』

 でした。

 

と言う訳で、今回はこの辺で!

ハクライト(@hakuraito00)でした!

 

老眼鏡に映る大人の恋愛劇『リストランテ・パラディーゾ』

時に皆さん「眼鏡萌え」はありますか?

どうも眼鏡大好きハクライト(@hakuraito00)です。

そんな眼鏡萌えを持つ多数のお姉さまに問いたいです。

『老眼鏡紳士』ってどうですか?

と言うわけで、今回紹介する漫画はこちら!

作:オノ・ナツメ先生
『リストランテ・パラディーゾ』

 

『リストランテ・パラディーゾ』簡単3行あらすじ

主人公ニコレッタは、自分を捨てた母親に会う為、彼女の現在の旦那が経営するイタリアはローマのリストランテを訪れた。

その店の従業員達は皆が老眼鏡を掛けた紳士で、そこで彼女はクラウディオと言う老紳士と出会い、次第に大人の魅力にはまっていく。

大人の男性に憧れる女子に送る、老眼鏡ラブコメディ。

 

 

掲載誌情報!

大田出版さんの、「マンガ・エロティクス・エフ」と言う雑誌にて、2005年5月から2006年の3月まで、連載されてました作品です。 

多数のスピンオフ作品が出ておりますが、本作はこの『リストランテ・パラディーゾ』一冊で完結となっております。

タイトルのパラディーゾ』とは、『天国』と言う意味だそうです。

このパラディーゾが、どう関係してくるかは是非とも本編を御覧になって下さい。

まずはみんな眼鏡をかけよう。話はそれからだ

私は眼鏡を掛けていると、魅力が3割増し所か、5割増しくらいに感じる程の、生粋の眼鏡萌えニストなんですが、私の周りを聞くと、どちらかと言えば眼鏡に萌えるのって、男性より女性の方が比率が高い気がするんです。

つまり、

彼女の居ない男子はみんな、眼鏡をかけるべき

なのですよ(強引な理屈) 

本作品は、眼鏡の中でも更にマニアックな

老眼鏡紳士

というジャンル。

老眼鏡を掛けているという事は、それすなわち相応のお歳を召した男性という事。
だけれでもそこには、若い人には出せない、老齢故の味のある色気と言う物も存在するのだと、教えてくれた本であります。

そして、人生も折り返し、自分はもうとっくに枯れてしまったからと自覚し、諦めてしまった彼らの心に、再び恋と言う炎が灯る時、どんな物語が描かれるのでしょう?

一度枯れた葉だからこそ、灯った炎は厳かに燃ゆる。

イタリアを舞台にした大人の恋愛劇。
そこには、強烈に胸を焦がすような思いや、相手を思う余り涙してしまうような熱い情熱などはほとんど介在しない。

静かな時間に、厳かな空間。お互いの存在を慈しみ、束縛するでも無く、放置するでも無い。ただ、共に居られる瞬間を感謝するような、そんな柔らかな恋愛。

登場人物のほとんどは、一度も二度も、苦い経験を重ねた末の熟成した色気を醸し出す、大人達。

それに対し、主人公のニコレッタはまだまだ子供で、想い人のクラウディオに対し、自分の気持ちを確かめる意味も含めて、熱烈な想いと若さを武器に、彼に対し強引なアタックを試みたりもしてしまう。だがその想いを優しくたしなめられ、スマートにかわされる度に、彼が大人であり、自分がまだ子供なんだと言う事を強く自覚してしまう。

大人と子供の境目とは、一体なんなのだろう?

読み終わった後、まるでそんな事を問いかけられている様な気になる作品です。

 

相手の気持ちを思いやり、彼の抱えてきた傷を、彼の今まで人生を理解し、そして尊重する事。それは、相手に一方的に自分の想いを伝える、若さの芽吹く初々しき恋とは真逆の位置にある存在。

クラウディオとの人生の圧倒的な経験値の違いに打ちのめされる出来事もありつつも、諦めずに焦らずに、ニコレッタは知らず知らず、まるでクラウディオに導かれるように、大人の階段を上っていく。

そしてクラウディオもまた、ニコレッタの若い情熱に戸惑いながら、どう真摯に答えていいものか分からずに、迷いの日々を送る事になる。

 

そんな時にふと目の前に現れる、彼の元妻。

年齢に関係無く、人と人との人生が一瞬でも交錯すると言う事は、それだけで奇跡と呼べるものなのかもしれない。だけれどもニコレッタは、元妻の前で、自分の知らない表情を浮かべるクラウディオの横顔に、悔しさを感じたりもする。

 

子供の貴方、大人の貴方、男性の貴方、女性の貴方、歩いてきた人生によって、読み方、感じ方は違うと思います。だけどもし貴方の人生の先か、もしくはすぐ傍に、諦めていたかもしれない大人の恋愛がコロンと転がって来るかもしれない。

何故って、恋はいつだって、唐突で、突然で、情熱的なものだから。

 

もしも老眼鏡や眼鏡や、老紳士が好きな方は、是非一度手にとって見てください。 

ついでに言うと、やたらとパスタが食べたくなる作品でもあります(笑)

いや、舞台がイタリアンレストランだからか、やたらと美味そうなパスタが一杯出てくる訳ですよ。

 

 

と言う訳で、今回紹介しましたのは、

作:オノ・ナツメ先生

『リストランテ・パラディーゾ』

でした。 

と言う訳で、今回はこの辺で!

ハクライト(@hakuraito00)でした!

日常に侵食する深淵『外れたみんなの頭のネジ』

皆さん、ホラーはお好きですか?
怖いな~でも見たいな~、どうもハクライト(@hakuraito00)です。

今回はホラー作品ですが、ホラーが苦手な人にこそ、是非読んで欲しい作品なんですよ。 

それではようこそ、覚悟はよろしいですね?
と言う訳で今回ご紹介いたしますのはこちら

 

作:洋介犬先生
『外れたみんなの頭のネジ』

 

『外れたみんなの頭のネジ』簡単3行あらすじ

ここ最近街の人達が狂い始めていると感じていた七尾ミサキの元に、彼女にしか見えない悪魔のべへりんが現れた。

「悪魔の俺が見えるって事は、狂ってるのは街じゃなく、お前の方なんじゃないのか?」

狂っているのは自分か世界か、恐怖が日常に侵食してくるマッドサイコホラー

 

掲載紙情報!

2015年6月14日より、WEBコミック配信サイト『GANMA!』にて連載中。
2019年3月現在、第7巻まで発売中。

 

「もしかしたら……」が付いて来る『日常系ホラー』

巷にホラー作品は沢山あります。

ゾンビやモンスターなどに襲われる『パニック系』

幽霊や亡霊など、正体不明の物にとり憑かれる『オカルト系』

突如理不尽な死のゲームに巻き込まれる『デスゲーム系』

などなど 

私が今作品を分類するとしたら、

『日常系』

だと断言します。(ホラーの分類じゃないですね)

 

普通のフィクション要素の強いホラー作品は、見終わった後に「あー怖かった」と言って、日常に戻る事が出来るのですが、この作品(と言うか洋介犬先生の作品全般)の素晴らしい部分は、読み終わった後に、日常の細部に、

「もしかしたら……」

と言う疑念を抱かせるようになるところです。

本を閉じてもスマホを閉じても、帰り道の暗がり、電気の点いていない部屋、横断歩道向かいの女性の影に、物語の続きを見る事でしょう。

そして本作品は一話完結型の連作短編形式を取っております。

個々に起こる狂った事件はやがて折り重なり、徐々に一つの真実へと導かれて行きます。

そしてその暁には、貴方を狂気と深淵の世界へと導いてくれるでしょう。

深淵を覗く時、深淵もまた、こちらを覗いている。 

この本のページを捲る事。

スマホをスワイプする事。

このブログで、作品を知る事。

そんな何気ない行為が、貴方を狂気の世界へと誘っているのかもしれません。

読み終わり、日常に戻ったと勘違いしていた貴方がいる『世界』

 

もしもある日、そんな世界が突然狂ったら?

もしもある日、家の裏に、謎の記号がびっしりと書かれていたら?

もしもある日、クラスメートが突然、奇声を発しながら教室中を走り回ったら?

もしもある日、電車で隣に座った人の必死にあやしている赤ちゃんが、人形だったら?

もしもある日、街中でぶつかった人の口の中に、もう一つ顔があったら?

 

ありえない、そんな事ありえる筈が無い。

 

普通の作品でしたら、そう捨て置くのは造作も無い事でしょう。

しかし、この作品を読み終わる頃には、

「もしかしたら……あの作品を読んだ所為かも……」

そんな有り得ない疑念が心の中に積み重なり、気づくとほら、貴方も狂った世界の住人となっているやもしれません。

 

 

そしてある日、街中の皆がおかしい行動をしていると感じた時に、意を決してそれを注意した貴方に向かい、皆が白い目を向け出します。

 

「何を言ってる! おかしいのはお前の方だろう!」

 

それを貴方は、本当に否定する事が出来ますか?

 

本当の恐怖と言うのは、恐怖体験をした時、それを『普通の出来事』だと思ってしまう事かもしれない。

狂った世界で正気を失うことは、不幸なのか? それとも幸せか? 

夕方くらい、逢魔が時の時間くらいから読み始めると、読み終わる頃にはすっかり夜。闇を心地いいと感じたら、それは狂った世界に足を踏み入れている証かもしれません。

と言う訳で、今回紹介しましたのは、

作:洋介犬先生

「外れたみんなの頭のネジ」

でした。

では、今回はこの辺で。

ハクライト(@hakuraito00)でした!