ハクライトのおすすめ漫画ブログ

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耳で聞く文学、ようこそ朗読の世界へ『花もて語れ』

幼い頃、寝る前に本を読んで貰った事はありますか?

どうも、朗読も読み聞かせも大好き、ハクライト(@hakuraito00)です。

さて、今回紹介します漫画はこちら。

作:片山ユキヲ先生
『花もて語れ』

『花もて語れ』簡単3行あらすじ

両親を亡くし、地方の叔母の元へと引き取られた、小学一年生の佐倉ハナは、引っ込み思案で口下手、先生や友達ともまともに会話が出来ない

そんな彼女が出会ったのは、教育実習生の折口柊二と、彼に薦められた朗読

学芸会の出し物のナレーションを担当したハナは、その後22歳で上京し、ある事件をきっかけに、再び朗読と向き合う事になる。

 

掲載誌情報

『月刊!スピリッツ』2010年3月号にて読み切りを掲載後、同誌で2010年6月号から2012年2月号まで連載。
その後、雑誌を『ビッグコミックスピリッツ』に移し、2012年25号から、2014年35号まで連載。
全13巻、112話で完結しております作品です。

朗読と言う地平だからこそ広がる想像の裾野

さてさて、今回は「朗読」をテーマにした作品、「花もて語れ」です。

まずは皆さんにご質問。

朗読に触れた事がありますか?

あると答えた方は、結構がっつり触れている方が多かったり、自らが読み手だったりする方も多いでしょう。

無いと答えた方にこそ、是非朗読の入り口として、この漫画を手にとって欲しいと思っております。今は若い役者や、声優さんなど、朗読を聞ける場面もかなり増えました。堅苦しく考えず、エンターテイメントの一つとして、受けとめて欲しいと思っております。

 

また、幼いお子さんがいる方は、お子さんにどんな本を読んであげていますか?

絵本に限らず、物語を声に出して読むと、自分で黙読する時とはまた違った世界が広がる時があります。読んだ人の世界を通して入ってくる物語だからこそ、その人の想像力の断片が、盛り込まれているからかもしれません。

料理をお母さんが作ったときに、自分が作った時とは同じ味にならないのは、お母さんの手心や思いが、味に伝わっているから、と言う説もありますよね。

読み手が変われば、聞き手の中に広がる世界も変わる。朗読の魅力の一つであり、可能性の一つであるとも言えます。

現代まで生き残っている朗読と言うジャンル

その昔は、本と言うものは『音読』が基本でした。書物と言うのは高価な物であった事もあり、知識は共有するものであったり、又は声に出して読みながら、目と耳で同時に情報を仕入れた方が、深く頭の中に入ってくると言う認識だったのでしょう。

受験勉強とかでも、声に出しながら問題を解いていく手法がありますよね。

今となってはそんな人がいたらびっくりですが、電車の中とかでも平気で、本を声に出して読む方が沢山いたそうです。

時代は変わり、本は誰でも手に取れる時代になりました。そうなる事で、声に出して読む「音読」より、より素早く読むことの出来る「黙読」に、読書は変わっていきました。(まぁ、五月蝿いからやめてほしいって意見もあったのでしょう)

 

では、現代において、朗読と言うものはどう言う風に変わっていったか?

 

最近では、自己啓発本やビジネス本のリーディングブック(耳で聞く本)と言うのも増えてきたり、音読の需要が無くなった訳ではありません。

その上で、朗読と言うのはやはり、エンターテイメントであると、この作品を読んで感じます。

目で読む事で更に広がりを見せる朗読の世界

本書の中に出てくる作品は、『宮沢賢治先生の「やまなし」』『新美南吉先生の「ごん狐」』『斉藤隆介先生の「花咲き山」』など、幼い頃に絵本として触れた事があるような作品も、いくつも出てきます。

 

そしてここが、主人公佐倉ハナの朗読の才能たる所以なのですが、彼女が本を読み、声を出した瞬間から、客席に座っているお客さんは、一瞬にして彼女が読んでいる本の世界に吸い込まれて行くのです。

息遣い、計算された間、表情、その一つ一つの意味などを観客と読み手が共有した瞬感に起こる、圧倒的な程の物語への没入感。読書に集中している時に起こる、世界の広がりを、会場全体で共有出来る一体感。それは、他のどんなエンターテイメントにも引けを取らない、朗読ならではの表現の世界であると思わせてくれます。

 

正直言って、最初は私も「漫画で朗読ってどう言う風になるの?」なんて思っていたんです。

ですが、本作は朗読を読む際の教則本としても相応しい程、視点の移動や、読解方法など、詳しく書かれています。

そして、ハナや、後に出てくるハナの親友の朗読シーンなど、涙がぼろぼろと零れてくる程の共感力があります。

感動や悲劇では無い、温かく深い優しさを感じる故に泣いてしまう。そう言う涙が自然と流れてくる作品です。

 

「声に出して文学作品を読むためには、その意味を正確に把握しておく必要がある」と言う観点から、本書は描かれているそうです。だからでしょうか、一つ一つの物語、含め、出会うべくして出会った一人一人の事を、ハナは大切に扱っているように感じます。

それは、人間一人一人が、一つの物語なんだと、本書では言いたいのかもしれません。

 

そして作品の途中、ハナは再びかつての恩師、折口柊二と再会します。

朗読で紡がれた彼らの出会いが、どう言った結末を迎えるのか、是非ともご一読して貰いたい作品です。

 

朗読と言うジャンルに触れたことが無い方こそ是非触れて欲しい、そして、もっと朗読の裾野が広がればいいと、一人の本読みとして、そう願います。

 

今回紹介いたしましたのは、

作:片山ユキヲ先生

「花もて語れ」でした。

それでは、今回はこの辺で。
ハクライトでした。