報われない努力は無駄なのか?『3月のライオン』
本日は2019年の3月31日です。
明日はいよいよ新しい元号が発表されますね。
どうも、ワクワクしてます、ハクライト(@hakuraito00)です。
3月の最後には、是非、こちらの作品を紹介したかったのです。
それでは早速、今回紹介いたしますのは、こちらの作品。
作:羽海野チカ(うみのちか)先生
『3月のライオン』
『3月のライオン』簡単3行あらすじ
両親を交通事故で失い、行く宛の無くなった少年桐山零(きりやまれい)は、父の友人での幸田に引き取られ、プロの棋士を目指す将棋一家で生きる為に、将棋の世界へと足を踏み入れた。
圧倒的な努力の積み重ねの後、弱冠15歳の若さで、史上5人目のプロ棋士になるが、それは将棋一家の幸田家を崩壊へと導いたと感じ、六月町で一人暮らしを始める。
その後、橋向かいの三月町で祖父と暮らす三姉妹、川本あかり、ひなた、モモと出会い、人の温かさや優しさに触れていく、胸の奥底に明かりが灯る、熱き将棋の世界を舞台にした珠玉の人間ドラマ!
掲載誌情報!
白泉社『ヤングアニマル』にて2007年第14号から、現在も連載中です。
2019年3月現在、14巻まで発売中です。
このブログを立ち上げ、本当は一番最初に紹介したかった漫画でしたが、折角なので三月の最後の日が、この作品に相応しいと思い、この日まで我慢しました。
と言う訳で、普段よりちょっと長いかもしれませんが、お付き合いください。
アニメ化、実写映画化、スピンオフ。盛り上がりを続ける3月のライオンと、現実の将棋界
さて皆さん、将棋は好きですか?
私は大好きです!
基本的に昔は振り飛車党(飛車を動かす戦法)でしたが、最近はよく居尾車(飛車を動かさない戦法)も指しております。
本編の中でも、零君は居飛車党なので、もしかしたら感化された部分もあるかもしれません。元々将棋が大好きだった私は、3月のライオンの大ヒットにより、将棋界がもっと盛り上がってくれたら更にいいのになと、こっそり思ってました。
そんな時、将棋界に彗星の如く表れ、世の話題をかっさらっていった方が居ましたよね?
そうですね、ひふみんですね。
はい、すいません、加藤一二三さんも大好きですが、どちらかと言えば将棋界を引退なさってから話題になった方ですので、今回は勿論、藤井聡太さんの事を言っています。
3月のライオンでは、史上5人目の中学生天才棋士として、桐山零君の事が書かれています。これがどれくらい凄いことなのか?
現実の将棋界においても中学生でプロ棋士になったのは、加藤一二三さん、谷川浩司さん、羽生善治さん、渡辺明さん、そして藤井聡太さんの5人のみ。
作品の盛り上がりと共に、藤井さんが登場した事に、運命を感じましたよ。
「リアル零君じゃないか!!」
と、今でも藤井さんを応援しているハクライトです。
将棋界の事はこの辺りにして、本作の事について語って行きましょう。
「3月はライオンのようにやってきて、子羊のように去る
(March comes in like a lion and goes out like a lamb)」
『3月のライオン』と言うタイトル、とても綺麗な言葉だと思いますが、これって元は、イギリスに伝わる、天気にまつわることわざだそうです。
3月は荒々しい気候から始まり、 穏やかに去っていく事から、このことわざが生まれたそうで、これを聞いた羽海野先生が「何か物語が生まれそう」と思い、このタイトルにしたそうです。
また、監修の先崎学さんによると、3月は順位戦(1年を通して行われる、棋士達のランキング制度)の末期。この時期は、全ての棋士が荒々しい獅子のようになるから、と言うコメントも残しているそうです。
本作は、将棋の世界で命がけで戦う棋士達と、盤面では無い普段の生活の上でも、精一杯生きる川本家との対比を、どちらにも行きかう桐山君の視点で描かれています。
その所為か、桐山君に共感する部分も多くありつつも、私はこの3月のライオンという作品を、「桐山君の視点」で読むことが非常に多いです(勿論、島田さん視点だったり川本家のおじいちゃん視点だったり、色々動きますがね)
そこで、私はこの作品に教えて貰った大切な物が二つあります。
まずは、川本ひなたちゃん。本作のヒロインとも言うべき子です。
この子です、可愛いですよね。
ひなちゃんに教わったのはこちら
人の為に笑う事の、難しさと大切さ。
本編の中で、川本家の次女、ひなたちゃんは非常に良く表情の動く、可愛らしい子です。ですが彼女は、通っている中学校のクラスにおいて、とても辛い目に合うエピソードがあります(これは是非、まだ未読の方は、5巻以降を覚悟を決めて読んで欲しいです)
そんな時でさえ、ひなちゃんは、自分自身以外の誰かの為に、覚悟を決めて朗らかに笑うのです。それが零君の胸に強くささり、ひなちゃんと零君の絆を更に強くするきっかけにもなるのですが、私はそんなひなちゃんの態度を、本当に誇らしく感じました。
「中学生の女の子が出来る事だなんてとんでもない。こんな事が出来るなんて、本当にこの子は素晴らしい」
本編の中で、ひなちゃんの行為に対し、おじいちゃんが「よくやった!」と手放しで褒めるシーンがあります。私もそのシーンで、ボロボロ零れてくる涙を抑えることが出来ませんでした。
自分が本当に辛いときに、自分よりも人を優先する事ができるのか?
誰かの為に笑う事が出来るのか?
一生かけて、探り続けて生きたいテーマです。
そして、勝負の世界の方では、特に島田さんに強く共感し、思い知らされることがありました。
この方ですね。
島田さんから感じることはこちら。
報われない努力は、無駄なものなのか?
島田さんとは、零君の先輩棋士、ライバルの二階堂の兄弟子にあたる棋士です。
薄くなっていく髪の毛と胃痛と常に闘いながら、勝負の世界で弛まぬ努力を続ける、いわば『凡人の星』だと思っています。
主人公の零君は、史上5人目の天才棋士と謳われるのも分かる通り、どちらかと言えば天才の部類です。
対する島田さんは、いつもいつも物凄い努力を重ねるが、後一歩の所でタイトルに届かなかったり、天才達が自分をいつも追い抜いていくのを、歯を食いしばりながら見送り、それでも、努力をやめない人です。
作品の中でも、島田さんのファンは多いかと思いますが、ふと私は思ってしまったのです。
「どうして、そんなに努力をし続ける事が出来るの?」
彼の人気の秘密は、不遇の立場にありながらその状況に腐らず、尚且つ大人の立ち居振る舞いが出来、不断の努力を積み重ねられる人柄の部分にもあるでしょう。彼を慕う人は、本作を読む人にも、そして作品の中にも数多く存在します。
いつだって諦める事が出来る、だけど、島田さんは彼らの為に頑張っている。
そう読むことも出来るでしょう。だけど、私は島田さんがこれだけ頑張るのは、
『努力は、報われる報われないで考えてはいけない。そして、頑張り続ける努力は、いつか報われるべきだ、そうでなきゃいけない』
と言う、羽海野先生の強く込めたテーマが隠れている気がしてなりません。
羽海野先生自身も、前作『ハチミツとクローバー』がヒットするまでは、不遇の時代を過ごしていたと言うのも聞きます。
そんな先生が描いているからでしょうか? 島田さんの努力は、いつか報われる為に、今の不遇の時代があるんだと、そう信じてやみません。
そしてだからこそ、今の自分が苦しい状況にある人の心を引き付けてやまず、沢山の人に支持されているのではないでしょうか?
みんな辛い、頑張っているのは自分だけじゃない、島田さんだって頑張っている! 自分だって、まだ頑張れるはずだ!
島田さんの努力がいつか報われるその日まで、私はこの作品を追いかけ続けようと思っております。
とにかく、人の心の深いところを掴んで離さない、とても素晴らしい作品です。
まだ読んだ事がない方、読んでいたけど、止まってしまってると言う方、この機会に是非また、ご一読ください!
と言う訳で、本日、2019年3月最終日に紹介しましたのは、
作:羽海野チカ先生の
『3月のライオン』でした。
それでは、今回はこの辺で!
ハクライトでした!