ハクライトのおすすめ漫画ブログ

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自分の当たり前以外を否定する事の残酷さ『聲の形』

漫画を選ぶ時の基準は何ですか?
どうも、作品を選ぶ時は縁を重視します、ハクライト(@hakuraito00)です。

と言う訳で今回は、あるツイッターの呟きに興味を惹かれ、作品を読んで更に衝撃を受け、今となっては何度も読み返す、不思議な縁を感じる作品を語ります。

と言う訳で、今回紹介します作品はこちら。

作:大今良時(おおいまよしとき)先生
『聲の形』

『聲の形』簡単3行あらすじ

小学生の石田将也(いしだしょうや)クラスに転校して来た西宮硝子(にしみやしょうこ)は、聴覚に障害を持つ少女。

所謂『ガキ大将』だった将也は、耳に障害のある硝子をからかい、補聴器を何度も壊してしまうが、壊した硝子の補聴器の額が、170万円相当だと知り、自分が犯した過ちの大きさに愕然とする。

次のいじめの標的となった将也は、転校した硝子に謝罪しようと、高校生になった時、彼女を探し出し再会を果たす。

(注:本作のあらすじは、マガジン連載版の物となります)

 

掲載誌情報!

初出は2011年2月号の『別冊少年マガジン』で、本作が「第80回週刊少年マガジン新人漫画賞」で入選した時のまま、45Pで掲載されております。
その後、『週刊少年マガジン』2013年12号に、リメイクバージョンの61Pが掲載されました。(ハクライトが見たのは最初に見たのはこちらの作品です)

更にその後大反響の末に、『週刊少年マガジン』2013年36・37合併号より連載開始、2014年51号で完結。全7巻。62話となっております。

大ヒットの末、劇場用アニメのアニメにもなりましたこちらの作品、あらすじを聞いただけで「辛くて読めない」と言う声もよく聞きます。

だけど是非、傷を受けるのを覚悟の上で、ページを捲って欲しい作品です。

「もしも漫画は、1年に60Pだけしか読まない方、どうか今年はこの読み切りを読んで下さい」

私はどちらかと言えば、漫画との出会いは『縁』だと思っているところがあり、自分から情報収集もしますが、「今この漫画と出会ったのも縁だ!」「今、この人にこの漫画を薦められたのも何かの縁だ!」と考える事が多いです。

この作品と出会った縁は、今からもう6年も前(2019年現在)の、2013年になりますね。当時、『マガジン編集部の班長』だった方の、こんなツイートを目にしました。 

その人の漫画論は非常に興味深く、編集者がどのような視点で漫画と言う文化を見つめ、作り上げているのかを知ることが出来て、ツイートがある度に追いかけておりました。

1年間で60ページだけしか漫画を読まない人がどの位居るかは分かりませんが、私はそんな、漫画に関しては特段に信頼している人の謳い文句に、強烈に興味を惹かれました。

 

「マガジン編集部の班長が、今年漫画はこれしか読まなくてもいいと思わせられる程の作品って、一体どんなものなんだ?」

 

そうして出会った読み切りは、こうして6年と言う時間が流れた後でも、初めて読んだ時の強烈な衝撃と共に、私の心に残り続けております。

陳腐な表現ですが、正に頭をハンマーでぶん殴られたような衝撃を受けたのです。

その作品は、勿論連載になり、沢山の人の心に、衝撃と感動と、もしかしたら胸が痛い程の傷も与えたかもしれません。ですが、人生を生きる上で、読んでおくべき作品だと思います。

 

自分の世界の当たり前以外を否定する残酷さ。

 作品においての主眼は、いじめを後悔している人間と、過去にいじめられていた人間。
そしてその『いじめ』と言う行為の真ん中にあるのは『聴覚障害』です。

 

主人公の将也は、子供の頃は周囲の面白さだけが世界の中心になってしまっているような、言ってしまえばそれほど珍しいタイプでは無い、どこにでもいるような男の子です。

そんな彼のクラスに編入してきた硝子は、将也にとっては、自分が今まで出会った事の無い存在でした。

彼女が、耳が聞こえない生活を送っていると言う苦しさや大変さを知ろうともせず、珍しいものが来たと、面白半分にいじめを行います。

そして、彼女が居なくなった後に、いじめの標的が自分になった事で、彼はようやく彼女の痛みを理解する事になります。

どれだけ後悔しても、彼女を深く傷つけた事実も、自分へのいじめも止まりません。

物凄く胸に刺さり、私は辛い思いを感じながら読んでました。そしてその時に思っていたのは、

 

「将也の自業自得だ」

「硝子の痛みはこんなもんじゃ無かった」

 

そして、

「だから将也は、いじめられて当然だ」

 と言う結論に自分が至った事に気付いた瞬間、自分と言う人間の恐ろしさに震えました。

 

自分だったら、障害があるなんて理由で、硝子をいじめるような事はしない! 

そんな事は当たり前だ!

だから、将也が傷つこうがいじめられようが、当然の報いだ!

 

だけどこれでは、『自分には理解が出来ない、自分の世界に存在する「当たり前」から外れた存在を否定するように、硝子をいじめた将也と同じ』ではないか?

 

この『聲の形』と言う作品の素晴らしい部分は、誰しもが持ちえるかもしれない闇をあぶり出し、その闇を見つけた本人に、是か非かを問い掛けさせる力を持っている部分だと思います。

 

想像力を巡らせなければならない意味とは?

 とは言っても

「自分は絶対にいじめなんてしないし、やはり将也が間違っている」

と思う方も当然いる事でしょう。

 

いじめと言うものが社会問題になってから、もうどれだけの時間が経ったか分からない程、深刻な問題になってしまいました。

 私自身は、「いじめられる方も悪いんだ」理論には大反対です。

どんな理由があろうとも、いじめる方がいけないし、いじめられる方も悪いなんて事はあるはずない。賛否両論ある意見かと思いますが、私はそう思っています。

 

ただそれは、自分が間違った行為をしている自覚がある場合かもしれないと思ってます。

『聴覚障害』と言うのは、世間的には誰しもが理解が出来る、有名なものです。だから、対応策も想像が付きますし、社会的な保障なども比較的しっかりしているでしょう。

 

では、貴方の前にもし、貴方がまだ知らず、世間的にも殆ど認知されていない、病気や症状で苦しんでいる人がいた時に、貴方はどんな行動を取る事が出来ますか?

 

あの人の事について、自分は理解が出来ないから、助ける事は出来ない。

そもそも、嘘を言って同情を引こうとしているのかもしれない。

 

そう考えてしまう時、ありませんか?

 

人間です。全ての事に意識を向け、常に優しくいる事なんて出来る訳がありません。

だけど、私はこの作品を通じて、大今先生にこう語り掛けられている気がしてなりません。

 

『この作品は、社会のほんの一例を切り取ったものです。貴方の周りにも、病気や障害で苦しんでいる人がいるかもしれません。そんな人が一番辛いのは、助けて貰えない事よりも、理解を得られない事なのではないですか?』

 

じゃあ、その為に必要な物は何か?

 

私は想像力なのでは無いかと、思う次第です。

 

少しでも心に刺さった方、未読の方、読み直したい方、良ければ本作を読みながら、周囲に耳を傾け、想像してみて下さい。

もしかしたら新しい何かが、見つかるかもしれません。

 

 

と言う訳で、今回紹介しましたのは、

大今良時先生の

『聲の形』でした。

 最終巻7巻と比べると、二人の成長度合いが分かるかと思います。

 

それでは、今回はこの辺で!

漫画大好きハクライトでした!