常識を覆される快感『竜の学校は山の上』
ファンタジー物と現代物だったら、どちらが好きですか?
どっちも大好きハクライト(@hakuraito00)です。
ってな訳で、今回紹介しますのはこちら!
作:九井諒子先生
『竜の学校は山の上 九井諒子作品集』
『竜の学校は山の上』簡単3行あらすじ
日本で唯一、竜を専門に研究する学部『竜学部』がある宇ノ宮大学に進学した主人公東良隆。
竜の需要は現代の日本ではほぼ無い事を知り、現実と理想の狭間で揺れる竜が大好きな彼の心境は。
表題作『竜の学校は山の上』含め、9つの短編プラスあとがきで描く、鮮烈なデビュー短編集作品!
掲載紙情報!
2011年3月30日に発売。連載形式などでは無く、自身のサイトや同人誌に掲載していた作品から選出して、出版の形式に至る。
デビュー作からの圧倒的存在感
はい、ご存知、『ダンジョン飯』の九井先生のデビュー作で御座います。
え?ダンジョン飯知らない?
これですよ。見た事ある人も多いでしょう?
ダンジョンの中のモンスター美味しく調理して、ダンジョン進んでいくって漫画で、今流行りに流行りまくってるんです!
でも、ダンジョン飯はあくまで、初連載作品!
ダンジョン飯はいつか語らせて貰うとして、今回は九井先生のデビュー作にして源流
『竜の学校は山の上』
こちらを語っていきます。
まずは作品との運命的な出会いから語らせて下さい。
すいません、ここから少し語るのは、ハクライトがこの作品と出会った事を運命的に感じているって部分なので、スルーしたいなと思っても、我慢して読んで下さい。
そんででですね、出会いから語らせて貰うとですね、昔駅に隣接している小さな本屋さんがありまして、そこの新作棚に、ポッツーンと置かれてたんですよ。そんで手にとって見たら、タイトルと表紙に強烈に惹かれて、前情報とか一切無しにジャケ買いして、行きの電車で読みながら、
「ヤバイ! 天才を見つけてしまった!」
って、自分の直感の精度に感動したって話です。
そこからあらゆる人に
「九井諒子って知ってる?」
「新しい天才見つけたんだけどさぁ」
と宣伝しまくって、いつしか九井先生はダンジョン飯で、私程度が宣伝しなくても、すっかり誰もが知る作家さんになりました。それもこれも、私の草の根運動のお陰もありましょう!
はいすいません、作品の事語ります。
作品のジャンルに合わせて画風を変える衝撃
この作品集は、基本的には、ファンタジーの世界だったら現代の常識を、現代をテーマにしていたら少し不思議なスパイスを入れて、その世界で懸命に生きる人の日常を描くんです。
生きていればドラマチックな部分も、そうじゃない部分もあるじゃないですか?
本来なら取るに足らないようなシーンでも、現代の常識と言うしがらみで描く事で、共感も出来るし、今を生きる私達にフィードバックも出来るんですよね。なのに、説教くさい訳でも無く、物語としてのクオリティが非常に高い。
ですが、個人的に度肝を抜かれたのは、
作品によって使い分ける全然違う画風!
この本の中で言えば、現代物や、ファンタジー物と、時代物から現代劇、果てには気楽な感じで描いたような、ちょいと味のある崩れた絵の質感などなどなど、
その作品の世界観に合わせて全部絵のタッチが違う!
本当に一人の人間が描いたの? CLAMP先生みたいに実は4人いるんじゃないの? って思うくらいに多彩で素晴らしい。ですけど、そのタッチの違う物語の根底には全部
「九井諒子先生独特の空気」
とも言うべき、しっかりとした筋が通ってるので、納得もさせられるんですよね。
新宿駅から小田急線に乗りながら読み始めて、自分の駅に着いても帰らずに、駅のホームで一心不乱に読んだ当時の事が蘇ります。全部を読み終えた後にしみじみ思う訳ですよ。
ああ、この人は、絶対に売れる。間違いない。
まぁ近い未来、その予感は当然のように実現する事になるんですけどね。
特におすすめの短編『進学天使』
ハクライトが今作の中で特におすすめしている作品を一作、ご紹介させて頂きます。
タイトルは『進学天使』
簡単なあらすじはこちら。
背中に羽が生えている中学生の女の子。人間の身体は、羽があっても飛ぶのに向いていない。これからも飛べる筋力をつける為に、留学を周りから望まれている。だけど彼女は何だか渋っている。
彼女の飛ぶ姿に惹かれた主人公の反応は?
彼女が、留学を拒む本当の理由とは?
めちゃめちゃ切ないんですよ!
彼女がずっと抱えている、何故留学を拒むのかと言う理由は、他の人にとっては取るに足らないものかもしれない。だけど、本人にとっては、将来を左右する程の重大な問題な訳です。
理想と現実の違いを、現代とファンタジーとして表現する試み
皆さんも心当たりがあると思います。
目標の決まっている人間なんてごく一部。学生時代はみんな当たり前に、みんなが進路について悩んでいる。
でも、自分の出来る事とやりたい事は違う。諦めるのか、それとも夢を追いかけ続けるのか?
これもまた一つの悩み。
そして、自分の事は自分で何とか出来たとしても、例えば才能のある友人が、その才能を生かせる道とは別の道に行こうとしているのを、心の底から応援出来るのか?
めちゃめちゃ音楽の才能がある親友が
「いや、俺は絵が描きたいんだ。音楽は止める!」
なんて言い出したら、友として、親友として、貴方は応援できますか?
与えられた才能と、興味が向いている事が違った時どうするか。それを深く考えさせられる作品です。
それを九井先生は、理想と現実の違いを、現代とファンタジーにおける、常識の違いにおいて表現をしようとしたのでは無いか?
私は『竜の学校は山の上』を通して読んだ時に、そんな事を思いました。
ってな訳で、今回紹介しましたのは、
作:九井諒子先生
『竜の学校は山の上 九井諒子短編集』でした。
という訳で、今回はここまで。
ハクライト(@hakuraito00)でした。